日向崎萱

Open App
8/10/2023, 2:18:27 PM

扉が開いた。列車を降りる。差し込む西日に影を伸ばされながら、ホームに出る。
無人駅。なんの変哲もない駅。まだきっと途中の駅。でもそれが、私にとっての終点である。
ああ、ここに降り立ってしまったということは、もう向こうには戻れないということ。
歩みに後悔が乗る。
一歩
また一歩と
全てにサヨナラをするその歩み。
もうこれ以上行けるお金は残ってないんだ。
そうして私は、生前の病を振り払うようにして、深呼吸を一つ。
孤独死を物語る無人駅から、
一歩
また一歩と
遠のいていく。
私を取り巻く全てにありがとうと伝えながら。

8/9/2023, 2:35:05 PM

みんなと同じように生きたい。
けど叶わない。
教えてよ。私にもやらせてよ。
誰も私を普通とみなしてくれない。
だれか
誰か助けて。私をちょっとだけ救ってほしい。
誰も見向きもしない。
けど、彼だけは違った。
「上手くいかなくたっていい」
そう言って手を差し伸べてくれた。
私も、みんなと同じ生き方を......
昨日、私は少しだけ、手を伸ばせた。

8/8/2023, 1:12:54 PM

腫れ物らしく世界の隅で
淡く溶けだす血の涙
大人のフリができない僕に
飛び交う痛みは哀の唄

ただ宛てもなく家を飛び出て
近所の空虚に駆け込んで
『蝶よ花よ』と刺された釘は
僕を貫く非難の目

8/7/2023, 2:45:56 PM

こうなることも、ああなることも全部。
「未来は変えられる」じゃない。
未来は変わらない。
変わらない
変わらない
変わらない
悪口もいじめも失恋も
全部最初から決まってた。

ああ、次はいつ死ぬのだろうか。
最初から決まってた。死ぬことも、蘇ることも。
記憶のようで、実は明日には起こること。
既視感がそれを確実なものにする。

8/6/2023, 11:26:33 AM

私に光をよこしてくれるな。
この醜い私に。
お願いだから照らさないで。
私を浮き彫りにしてしまう。
おはようと声をかけないで。
私を照らすあなたは光。
やめて視線を向けないで。
闇を消し去る哀れみの視線を。

でもさよならとは言わないで。
月明かりはひどく冷たいから。
あなたの温もりだけが欲しい。
影を消さない月光にかわって。
もうごめんねとは言わないで。
影を焼き殺すあなたは太陽。
一人の犠牲で全て助かる。
あなたに殺される私は影。

Next