〖無垢〗
真っ白で、ふわふわで、花みたいな君がやってきた。
彼女が歩みを進めるたびに、
ふわふわ、ふわふわ、と揺れている。
暖かな光に包まれて、君はとても楽しそうだ。
にこりと笑うと、またふわっと揺れた。
〖終わりなき旅〗
目の前に、知らない景色。
一歩足を進める。
目の前に、知らない景色。
決まった目的地はない。
どこで終わるかも分からない。
後戻りはできないし、
二度と同じ場所には来られない。
ただゆっくりと、歩みを進めるだけである。
〖ごめんね〗
僕よりつらそうな顔をしている君に、
どうしても上手く接することができない。
不甲斐なくてごめんね。
君が少しでも早く笑顔になることを
祈っているよ。
〖太陽のような〗
きらきらとあたたかい光。
それを受け取るだけの僕よりも、
何倍も長く輝くのだろう。
どうかいつまでもあなたのしあわせが続きますようにと、
余計なお世話かもしれないけれど、
長い旅路の安寧を祈った。
〖10年後の私から届いた手紙〗
10年後の私から手紙が届いた。
消印が10年後なのである。
何とも奇妙なことだ。とても信じられるものではない。
しかし、手紙には見たことのない新100円玉や
10年後の日付の雑誌(まだあるんだ!)の切り抜き、
まだ存在しないお店のレシートなど、
証拠がこれでもかというほど添付されていた。
流石。私の性格を熟知している。
少しどきどきしながら手紙を開いた。
何があったのだろう。余程重大な出来事が起こったのだろうか。
しかし、文章は他愛のないものだった。
最近揚げ物がつらいから今のうちに食べておけとか、
そんなことばかりである。
未来に何が起こるかなどさっぱり分からなかった。
怪訝な顔で読み進めていくと、
手紙の最後に、私の筆跡でこう記されていた。
「これはタイムリープのテストである。
10年後まで大切に保管しておいて欲しい。」
なるほど。私が人生のネタバレをするはずがないと思っていたが、そういうことか。
私は、その手紙を大切にしまいこんだ。
たったひとつのネタバレ、
タイムリープの開発に胸を踊らせながら、
私はまた未だ来ぬ時へ行くのである。