1日の始まりはいつも真っ白だった
過去を振り返り、そう思う
何も書かれていない白い紙のように
眩しいほどに自分に照らされる白色の舞台の照明のように
朝目を覚ます度、僕の記憶も感情も何もかもが失くなる
だけど、僕に都合のいい記憶は比較的覚えている
例えば、昨日勉強していた教科の内容やテストの点数
どうしてそんなしょうもないことを覚えているのか
そんなことより大事な記憶はもっとたくさんあるのに
友達と過ごした時間の記憶
楽しかった、苦しかった時の記憶
僕が大切にしていた時間の記憶
そんな記憶を残してほしい
こんなことを望んでも叶うはずはないのだけれど、
今の状況から一刻も早く逃れたくて必死で祈ってる
僕は、忘れたくても忘れられない記憶があると
いつもすることがある
それは、そのときの自分を殺すことだ
そうすることで、僕は新しい僕になれるような気がする
いや、実際に新しい僕になっていたはずだ
だから、過去の記憶がほとんどない
でも、僕の脳は便利なもので勉強に関する記憶は残っている
そのため、今まで勉強で困ったことはない
だが、勉強以外の記憶は消えていくので、
友人との会話は毎回曖昧で会話をするのも一苦労だ
……僕は一体何者なのか
それは何度も考えたことだ
自分を殺すたびに増える疑問
だけど、自分を殺すことは止められない
そんな哀しい生き物なんだ
それが今の僕の答え
この答えが変わることはあるのだろうか
その問いの答えは今の僕にはわからない
僕の夢は飛行機のパイロットになることだ
そして、世界中を飛び回りたい
高く高く空を飛び、乗客を乗せて、広い世界を眺めてみたい
だが、それは数年前の話だ
今は視力が身体の成長と共に落ちていき、
回復できないほどに弱くなった
親には「また違う夢を見つければいい」言われ、
友人には「そんなことで落ち込まないくてもいいじゃん。もっと楽しいことをしよう」と言われた
その言葉たちは僕のことを思って言ってくれてるのかなと思うとありがたいと感じるが、
パイロットになる夢を見続けてきた僕にとっては、
とても心が痛くて苦しくなった
そして、諦めることにも慣れてきた今、
僕は公務員を目指し、今日も勉強している
小さい頃はたくさん夢を見なさいと言われ、
年齢を重ねるごとに、現実を見なさいと言われるようになる
無邪気に笑って遊んでいられた子供のころに戻りたい
子供のように誰とでもすぐに打ち解けて、
どんな世界でも見に行けるようになりたい
そして、現実を見ないふりして大きな夢を掲げたい
そんな理想を夢見ても
現実を知ってしまった以上その現実を無視することはできない
とても残酷で理不尽な現実を
HRが終わり、いつものように部活に行こうとする
だけど、今日は部活が休みだ
完全下校時刻の合図なしに校門を抜けるのは少し寂しい
いつもなら部活仲間と愚痴りながら部室に行くのに、今日はお互いに潔くまた明日と言い合う
まだ辺りが明るいうえに空が夕日で赤く染まっていた
今日は時間があるからゲームでもしよっかな
でも、今日は夕焼けが綺麗だからゆっくり遠回りして帰ろう
こんな放課後も悪くない