推しは推せる時に推せ!
情熱が枯れる前に推しまくれぃ
───後悔
早く……早く……ハァハァ
急ぐんだ……
ペダルを漕ぐふくらはぎがこれ以上ない程固くなり、自分では制御できないほど乳酸が溜まっていくのがわかる。
体を自転車ごと投げ出して、冷たいアスファルトの上に寝転がり全身の乳酸を開放したいくらい体は限界を迎えていた。
でも……
ダメ!
私の名前を呼ぶあの人が待っている。
毎日こんな私をいつもの場所、いつもの時間に待っていてくれるあの人をがっかりさせる事なんてできない。
だから限界を迎えようとも乳酸もろ共突破するんだ。
走れ漕げペダルを回して心を燃やせ!
私は髪を振り乱し一心不乱に自転車を漕いだ。
「…さん、…さん」
遠のく意識の中あの人の呼ぶ声がした。
ガラッ
勢いよく戸を開け第一声をあげる。
「は、はいいぃぃぃ!!」
「はい遅刻」
「……」
「名前を呼ばれる前に席に着いてなさいって何回もいってるでしょう?」
「すみません……あの」
「何」
「向かい風が強すぎて……ペダルが漕げませんでした」
───風に身をまかせ
何かな。やりたい事はたくさんある。小さい事からいずれなし得たい大きな事まで。
毎日の生活に忙殺され、その小さな事すら放棄し丁寧な暮らしとは真逆の日々を送る。
できない事の言い訳ばかり考えて現状に淀みとどまっているうちに、脳みそまで侵食され固くなってきたのだろうか。
考える事すら放棄したくなる。
重症だな。
私のやりたい事って?
何?
頭に霧がかかったみたいに思い出せない。
ああ─頭が、
霞む……霞……み、霞……め、霞も………
ん?
やだ、なんで突然のマ行五段活用なのよ。
文法苦手だったのに。
そういやカ行変格活用ってのもあったな。
どんなんだったっけ。
さすがに思い出せない。
そりゃそうだ。霞む頭でもしっかり覚えている。
テストは直前詰め込みタイプ。終われば一気に抜け落ち型。
はは。
もう少ししっかりやっておけばって毎回後悔してたな。
今も昔と変わらずとは…苦笑いしかできない。
コツコツ型の子に羨望していたあの頃を思い出す。
今からでも遅くないかな。
リベンジしてみますか。
───おうち時間でやりたいこと