夜は眠れない。
明日に響くとわかっていても。
あの子に会いたくて胸がズキズキ。
いつか、ただいまって、なんでもない笑顔で帰ってきて欲しい。
私は今まで酷い夢を見てて、それをあの子に話すと笑って。
考えれば考えるほど眠れなくなる。
大切なあの子を失った悲しみに殺されそうになるから。
「あのね、あたし、海に行きたい。崖のところで誓いの言葉を聞かせてくれない?病める時も健やかなる時もってやつがいいな。
…え、嫌?仕方ないなあ、じゃあハイって答えてね。それだけでいい。しっかり抱きしめて欲しい。抱きしめて、私を絶対に離さないで欲しい。
いいの!?やったあ!!強盗さん大好き!!」
そうして、海に着いた。
「ここ、本当に立派な崖だね。綺麗。ここなら誰も気付かなさそう」
「ああ」
「強盗さん、なんで私の家に来たの?」
「たまたま」
「運命的だね」
目を閉じれば、夢のように綺麗なドレスを纏って、タキシードを着た強盗さんが私を待っている。
誓いのキスは無いけれど、ウエディングドレスを着て一人で歩く私。
「生まれ変わっても、私と死んでくれる?」
「仕方ねぇな」
私達は、一瞬だけ冷たい風に触れて、海の中へ落ちる。
「愛してる」なんてちんけな言葉は、泡に包まれて消えた。
────次のニュースです。✕✕海の中から、二人の男女の水死体が発見されました。警察は心中と判断して捜査を続けており────
さよならを言わないで欲しいの。
不思議な顔しないでよ。
またねって言って。
また会おうねって。
なんか、雰囲気だけどさ、
さよならは、もう会えない。
またねは、また会える。
そんな感じがするんだよね。
だから、さよならは言わないで。
またね。
光る方は明るい。
優しいパパとママ。
あったかいご飯。
友達もいる。
幸せに結婚して、死ぬ。
闇の方は暗い。
冷たいパパとママ。
冷たいご飯。
友達はいない。
不幸せに結婚して死ぬ。
でも君がいる。
だから、私はここから、君のところに行くね。
待ってて
私とあの子の距離が開いてしまった。
いい事のはずなのに、涙が溢れて仕方がない。
周りの人は慰めてくれる。
泣かないでと言う。
それでも涙が止まらない。
だって、喧嘩しても、どんな事を言われても、私が一番傍に居たじゃない。
ああ、もう、なんて素敵な笑顔なの。
「結婚おめでとう」
私の涙は止まらない。
バージンロードを歩く娘の背中が、どんどん小さくなっていく。