私とあの子の距離が開いてしまった。
いい事のはずなのに、涙が溢れて仕方がない。
周りの人は慰めてくれる。
泣かないでと言う。
それでも涙が止まらない。
だって、喧嘩しても、どんな事を言われても、私が一番傍に居たじゃない。
ああ、もう、なんて素敵な笑顔なの。
「結婚おめでとう」
私の涙は止まらない。
バージンロードを歩く娘の背中が、どんどん小さくなっていく。
泣かないで。
私、あなたのこと大好きなのに。
ほら、真っ白いドレスに涙は似合わないでしょう?
泣かないで。
私、あなたのこと大好きなの。
ああ、でも、私のドレスは水玉模様だね。
泣かないで。
私、貴方のこと大好きなの。
これから、一生貴方の傍にいる。
泣かないで。
私、貴方のこと大好きなの。
新郎を殺して、貴方の傍にいたいくらい大好きなのよ。貴方を愛してる。
私達、女の子同士だけど、貴方も私のこと愛してくれてるよね?
だからそんなに涙を流してるのよね。
でも、泣かないで。
大丈夫。貴方を泣かすような輩は、私がこの世から消し去るからね。
子供の頃?
子供の頃はどんな感じだったのか。
目の前の子供はそう聞いた。
覚えてないなぁ…
そう言うと、不満そうな顔をして「なんで」と拗ねた様子だった。
ワガママっ子だったと聞いている。
あじさいが咲く季節になった。
あじさいを漢字で書ける?
私は、書ける。
お父さんに教えられたから。
お母さんには教えられてないけど。
街。
この言葉、いるんだろうか。
町でいいじゃないか。
「町で済ませりゃいいのに」
と、悪態をつく俺に、優しい恋人はくすっと笑った。
「そしたら、私の苗字、一文字になっちゃうじゃないの」
確かに。俺の恋人の苗字には街が入ってる。
「…じゃあ、俺の苗字、やるよ。そしたら新しい苗字になるんじゃないか?」
彼女はギョッとしている。
…あ、
「…え、確かに私達、付き合ってから長いけど、」
「…俺と、結婚、してください」
「…こんな私でよければ、末永く、よろしくお願いします」
…まだ指輪も買ってないけど。あの街にあるジュエリーショップで、一番綺麗なヤツ、買うか。