「一輪の花」
心の中に蒔いた種が
そっと芽を出し
双葉を広げ
やがてたくさんの
花の蕾を携える
そんな蕾たちの
想いが実り
花を咲かせることが
できるかなんて
誰にも分からない
微かな希望を胸に
色付いた蕾たちはいつか
鮮やかに咲き誇ることを
夢見ている
蕾には
一輪の花として咲く以外に
望みなどないのだから
「魔法」
もし僕が
魔法をかけることが
できたなら
君にかけた
僕を好きになるって
魔法が解けてしまう前に
そっと手を繋いで
幸せの温かさを感じ
何気なく笑わせて微笑みあう
そんな当たり前の風景を
過ごしていくんだ
この時間が
永遠に続けばいい
そんな虚しさの波が
現実の僕に
押し寄せるから
そんなのきっと
僕には耐えきれない
だから
魔法なんてかけないし
やっぱりここから
逃げ出そうと思う
「どんな未来が待とうとも」
未来はやって来ない
未来は今を歩く君が
生み出していくもの
未来は待っていない
どんな未来になるかは
君が歩んで決めるもの
なのに君は
まだ見ぬ未来に
怯えている
でも
君は君だから
君を信じて
生きていけば
いいんだ
何があっても
どんな未来でも
君が選んだ
ものなのだから
「夜空を駆ける」
何千年何万年前から
夜空は変わらずそこにある
ふと星空を見上げる
僕らの地上の景色は
目まぐるしく移り変わり
時は勢いを増し加速する
夜空に輝く星たちは
何億光年も前の光で
地球の夜を照らす
旅する過去の輝きは
地球を巡れば
再び宇宙へ還る
夜空を駆け抜ける星のように
蒼く光るこの地球も
やがて過去の光となる
宇宙を旅する蒼い輝きと共に
僕らはどこへ行くのだろう
「ひそかな想い」
君を想うと浮かぶ
胸の奥の上の方
じんわり浮き上がる
温かいもの
君を想うたびに滲む
背中の真ん中下の方
ヒリヒリとした
鈍い痛み
叶わないのなら
手に入れられないのなら
いっそ捨ててしまおうと
振り上げた腕に
感情が無言で制止する
振り下ろせば
消してしまえるのに
逃げ出せるのに
口に出せない
ひそかな想いは
複雑に腕へ絡みつき
離れようとしない