「風のいたずら」

風はいたずらばかりする

登校中の小学生
黄色い帽子
さらわれる

自転車漕いでる女子高生
制服スカート
めくられる

家族が並んで記念撮影
髪型全員
乱される

でもたまに

帆船を沖へと送り出したり
たんぽぽ綿毛を遠くへ飛ばしたり
雲を運んで恵みの雨を降らせたり
火照った頬を優しく撫でたり

こんな
いいことするんだよ

「透明な涙」

綺麗な心を持った
者にしか見えない
透明な涙があると
人々は噂する

どうしても
どうやっても
その涙を手に入れたい
激しい情熱や
切実な願望が
胸を張り裂き
人々の心を奪う

どうしても
どうやっても
その涙は現れない

やがて遠い憧れが
殺意にも似た
強い渇望へと変わる

綺麗な心を持った
者にしか見えない
透明な涙など
ないというのに

「あなたのもとへ」

駅の改札
規則正しい人の群れ
その流れに紛れ
階段を駆け登る
息を切らして出口を目指す
目の前の交差点
横断歩道を渡ると
建ち並ぶビルの中
人混みをすり抜ける

抑えきれない
鼓動と共に
あの角を曲がれば
もうすぐ会える

あなたのもとへ

「そっと」

例えばそれは
決して覗かないで下さいと
固く誓いを交わしたのに
好奇心が囁いて
そっと
障子を覗いてしまった物語

例えばそれは
決して開けないで下さいと
固く誓いを交わしたのに
好奇心が邪魔をして
そっと
玉手箱を開けてしまった物語

あなたの物語にも
いつかきっと
忍び寄ることでしょう

残酷に

そっと
そっと

「まだ見ぬ景色」

この海を渡った先には
どんな景色が広がっているのだろう

その頂きを登った先には
どんな景色が広がっているのだろう

あの空の彼方の先には
どんな景色が広がっているのだろう

まだ見ぬ景色を
待ち焦がれるこの気持ちは

水平線から昇る朝日の朝焼け色

山々に一面に広がる雲海の藤紫色

雲一つない藍よりも青い空色

まだ見ぬ景色とは
待ち焦がれて
ようやく出会えた虹のような
鮮やかな色彩で心を染めるもの