『夏の忘れ物を探しに』

あの瞬間（とき）
どうして探さなかったんだろう

二年前　入院していた父が亡くなった
医師 : 何か質問はありますか？これが最後です
わたし : 特にありません

面会は毎週木曜日
最後の10日間は面会ができなくなった
わたしの携帯に着信があった
真夜中の電話は不安ででられなかった
着信はその一度きりだった

父が伝えたかったことを探した
父のバッグを開き
紙切れひとつ見逃さないように
隅々までくまなく探した
携帯のバッテリーはゼロ
電源をつなぎ発信履歴を確認した
わたしへの発信があった
その後も何回か
めちゃくちゃな番号の発信があった
絶対につながるわけがない

もう見つけることのできないだろう
臆病で怖がりなわたしの忘れ物
いまも探し続けてる

『8月31日、午後5時』

猛暑日
酷暑日
熱中症警戒アラート発令
災害級の暑さ
40度以上最多の夏
向こう一カ月の気温も高い状態が続く見込み

日本列島が沸騰している中
わたしは電気屋さんにむかいました
オイルヒーターをもとめて

は⁉︎
なんて？
いまそう思われた方
とても正しいです

エアコンから青と銀のテープが
ヒラヒラとなびいてる中
ガランとした暖房器具売り場に立ち尽くす
少々　気持ちが先走っていたようだ

自分の愚かさに苦笑いした
8月31日、午後5時

『ふたり』

同じ方向を向いて
一緒に歩いて行く

そんなふたりでいられたらいいな

『心の中の風景は』

先生
リュック
自分の名前
診察室
無表情
手袋
口の中
新しい手袋
顔
近い
首
両手
強い力
親指
苦しい
脱力
安心
共感
クスッ
クスクス

『夏草』

またこの季節がやってきた
その生命力の強さを前に
けっして日和らない

この終わりなき戦いを制するため
強い日差しの中
頭の中はからっぽになり
無の境地に入る
達成感　ハンパない
心が整う

そろそろ終わりが見えてきた