思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ……なんて。
いかにも雅なことを考えるよね、昔の人は。
きっと、本当にその人のことが好きだったんだろうな。
僕?そうだなあ、僕なら……
恋愛感情でなくてもいいなら、そんな風に思う人はいるよ。
今日は何をしていたんだろう、何か面白いことあったかな、って。
いつも寝る前にそうやって、あいつのことを思い浮かべてるよ。
あはは、そう考えると、正に思ひつつ……だね。
もしもあいつが夢に出てきたら、現実では出来ないぶん、たくさん遊ぶんだ。子どもの頃みたいに。
あ、でも。
夢と知りせば 覚めざらましを……みたいになっちゃうな。だって、あいつとめいっぱいはしゃいだり、思いっきり走り回ったり、なんてこと、夢でしかできないもの。
夢もいいけれど、やっぱり僕は、現実であいつを大切にしたいな。
だからさ、夢だと知らないままでいいんだ。
夢で逢えたら、その分、現実でもたくさん話したり、散歩したりするから。
——え、今日も寝る前に「思ひつつ」なのか、って?
うーん、そうだなあ。
あいつの話だとさ、あいつはあいつで、自分自身の夢の中ではかなり忙しいらしいんだ。だから、もし僕の「思ひつつ」があいつに伝わっちゃうと、困らせちゃうかなって。
だから、今日はお休み!はは、そんな顔しないでよ。わかったわかった、また明日ね。
……ああ、そろそろ帰らないと。じゃあ、また。
寝る前の習慣、というわけではないんだけれども、私は日記を書いている。
町が寝静まった夜、みんなが眠った夜。眠らない私や彼も、暖かい布団で静かな時間を過ごしている夜。
今日あったこと、出会った人。何をしたか、どんなことを思ったか。あと、明日は何をしようか、なんてことも。
そんなことを、思いつくまま手帳に書き連ねていく。
一通り書いてしまうと、ベッド横の机に置いたホットミルクに手を伸ばしつつ、過去のページを遡る。毎回決まって1行目に記してある日付は、間隔があったり、なかったり。本当に、習慣とは呼べないなと苦笑する。
そういえば、あの子も日記を書いていると言っていた。彼の場合は、夢日記という部類に入るんだろうけれど。
今度、見せ合いっこしようかしら。
きっと彼は、困ったように、それでいて照れたように微笑みながら、大人びたその字で綴られた文字の連なりを見せてくれるだろう。
ああ、それから。古本屋の彼が、かねてから私が読みたいと言っていたあの本が入ったと教えてくれたっけ。早速、明日お邪魔しようか。
——今日はいつもより多く書いた。夢中になっていて、気が付けば、草木も眠る……な時間になってしまっていた。
相変わらず眠気は感じないけれど、日が昇るまで、さてどうしようか。
このまま暖かいベッドで眠る真似でもしようか、それとも彼のところへ遊びに行こうか。数え切れないくらいの時間を経てきた私たちなら、きっと、どれだけお話しをしても話が尽きることは無いだろう。
もしかしたら、苦手なあいつもいるかもしれないけれど。
何をするにせよ、とりあえず、もう一杯だけホットミルクを飲もう。そう思って、温もりの残るベッドを後にした。