「愛言葉を言いなさい」
「合言葉?」
「ちがう。愛言葉」
「合言葉なんて決めたっけ」
「ちがう。愛言葉」
「山と言ったら川みたいな」
「それは合言葉」
「うん。だから合言葉でしょ?」
「ちがう。愛言葉」
「んもうー。合言葉ってなんだよう」
「え、本当にわかんないの?」
「うん」
「私に愛してるって言いなさいよばか」
「え、あ、ああー。合言葉じゃなくて愛言葉か」
「言いなさいよばか」
「愛してるよ」
「きゃ」
#15 愛言葉
どこまでも続く青い空、白い雲、きみへの想い。
好きだって言ったよね。
僕の一生をきみに捧げるから、きみの一生を僕に頂戴って、言ったよね。
好きなら当たり前のことを言っただけ。
一分でも一秒でもきみから目を離したくない。
なのにどうして僕から逃げようとするの。
僕以外の男なんて見ないでよ。
誰そいつ。
クラスメイト?
知らないけど。
ねえ、僕達付き合ってもう長いんだしさ、そろそろきみの家族に僕を紹介してくれたっていいんじゃない?
きみを産んでくれたお母様、きみを育ててくれたお父様。
尊敬に値するお二人にご挨拶をさせてほしいんだ。
勿論、高級な菓子折りを用意する。
普段のきみの僕への態度も、他の男との逢瀬も、この日ばかりは目を瞑るから。
え、どうして会わせてくれないの?
付き合ってない?
誰と誰が?
え、え、何を言ってるの。
聞こえない、聞こえない。
え、付き合ってる人がいる?
僕じゃなくて?
は?
誰だよそいつ、連れてこいよ。
え、クラスメイト?
浮気じゃん。
僕という恋人がいながら、そんな奴と付き合ってるなんて。
浮気だ、浮気だ、浮気いいい。
あ、ねえ、ところでさ。
僕達付き合ってもう長いんだしさ、そろそろきみの家族に僕を紹介してくれたっていいんじゃない?
きみを産んでくれたお母様、きみを育ててくれたお父様。
尊敬に値するお二人にご挨拶をさせてほしいんだ。
勿論、高級な菓子折りを用意する。
普段のきみの僕への態度も、他の男との逢瀬も、この日ばかりは目を瞑るから。
え、どうして会わせてくれないの?
付き合ってない?
誰と誰が?
え、え、何を言ってるの。
聞こえない、聞こえない。
え、付き合ってる人がいる?
僕じゃなくて?
は?
誰だよそいつ、連れてこいよ。
え、クラスメイト?
浮気じゃん。
僕という恋人がいながら、そんな奴と付き合ってるなんて。
浮気だ、浮気だ、浮気いいい。
あ、ねえ、ところでさ。
僕達付き合ってもう長いんだしさ、そろそろきみの家族に僕を紹介してくれたっていいんじゃない?
#14 どこまでも続く青い空
お花に水をあげましょう。毎日愛を囁きましょう。
そうすると綺麗なお花が咲きますよ。
誰かが言った。
だから僕は水をあげたし、毎日愛を囁いた。
かわいいね。
今日も綺麗だよ。
愛してる。
きみだけだ。
僕は花を愛でているだけなのに、近所の人からはきもちわるいと言われた。
はて。なぜだろうか。
だって誰かが言ったんだ。
綺麗なお花を咲かせるためには必要なことなんだと。
あ、ここ汚れてる。
綺麗に拭いてあげようね。ほうら綺麗になった。
あ、ここも汚れてる。あ、ここも。ああここも。
どうしたのかな。どうしてこんなに汚れているのかな。
僕の愛が足りないの?
毎日同じベットで寝る?
いいよほらおいで。恥ずかしがらないで。
ああなんてかわいいんだ。
愛してる。
……
ガシャンッ
何か凄い物音が聞こえて目が覚めた。
空き巣でも入ったかと飛び起きれば隣には誰もいなかった。
ああ、ああ、なんてこと。
僕が同じベットで寝ようなんて言ったから。
僕のばかばかばか。僕はどうしてこうなんだ。もっとお行儀よく寝ないとだめじゃないか。
ベットの下に落ちている植木鉢を見つめながら僕は泣いた。
#13 繊細な花
日常が崩れていく。
僕の日常が、あああ。
何も高望みなんてしてないのに。
ただ好きな人と一緒にいたいって願っただけでしょう。
どうして邪魔するの。
どうして壊そうとするの。
既婚者だからだめ?
なんで?
子供がいるからだめ?
なんで?
そんな理由で人を好きになるきもちが止められると思ってんの?
僕はただ好きな人の抜け落ちた髪を拾って、鼻をかんだティッシュを拾って、空になったペットボトルを拾っているだけなのに。
どうしてやめなよなんて言うの。
どうしてきもちわるいなんて言うの。
ああもう僕のコレクチヨン、取らないでよおお。
僕のすべてが、あああ。
#12 日常
「僕、この本がほしいです」
「あ……えと。それ、売りものじゃないです」
「え、非売品なんですか? どうして?」
「失敗作だから……です」
「在庫はないんですか?」
「はい」
「ならやっぱり。世界にひとつしかないこの本、僕にください」
「え……どうして」
「好きなんです、僕」
「ひゃ」
「この本が」
「あ……ああ……この、本が」
……
あの時貰ってくれた本。今も読んでくれているのかな。
#11 好きな本