「星が綺麗だよ」
そう言いながら手を繋いでくれたお兄ちゃん。
あの日たしかに私はお兄ちゃんと二人きりの世界にいた。
「お兄ちゃん、あのね」
言えずに飲み込んだ言葉。伝えたかった私のきもち。
あの時の私はまだ小学生で、高校生になった今伝えることは難しかった。
どうしてあの時言わなかったんだろう。後悔ばかりが押し寄せてくる。
「お兄ちゃん、あのね」
私はもう、無知ではないの。だからこのきもちが実ることはない。
わかってる、わかってるよ。
だけどどうしたって消えてくれないんだ。
私はまた言葉を飲み込んだ。
#5 二人ぼっち
転んだって泣かないよ、ぶつけたって泣かないよ。
誰かにいやなこと言われたって泣かないし、無視されたって泣かないよ。
泣かないことは強いこと。
泣くなんて恥ずかしい。
そういうふうに躾られた。
だから私は泣かないの。
転んだって泣かない、ぶつけたって泣かない。
誰かにいやなこと言われたって泣かない、無視されたって泣かない。
それなら私はいつ泣けばいいんだろう。
好きな人に振り向いてもらえない時は泣いていいのかな。
大切な人と離れてしまう時は泣いていいのかな。
どうしよう、わかんないな。
私はどうすればいいんだろう。
ねえお母さん、私はいつ泣けばいいんだっけ。
#4 泣かないよ
「大切なものはなんですか?」
「愛だよ愛」
「うわー」
付き合いたての頃はなんだか恥ずかしくて、きゃーきゃー騒いで誤魔化してた。
月日を共に過ごしていくうちに、一緒にいることが当たり前になって。
今日、なんとなく昔した質問をしてみた。
「大切なものはなんですか?」
「愛だよ愛」
「うわー」
また同じこと言ってる。
変わったのは、あの頃よりもほんの少し大人になった私が、言葉は同じでもそこに秘められた感情は違ったもので。
恥ずかしさと、変わらないことへの嬉しさが入り交じったような甘いきもち。
「私もね、愛だよ愛」
#3 お金より大事なもの
確かめ合うように頬に触れる。
温かい体温。胸元に耳を当てれば生きている音がする。
「いつまでも傍にいるからね」
「喧嘩しても仲直りだよ」
そんなもの、互いの信頼関係がなければ成り立たないの、知ってるくせに。
今こうして隣にいないのは、私達の絆が足りなかった結果だね。
#2 絆
花は好きじゃないと言っていた。僕だって、好きな人に花をプレゼント……なんて柄じゃない。
ただ、これは一生のことだから。
きみに振り向いてほしくてやったこと。
「僕と付き合ってください!」
ピンク色の花束を前に、困惑するきみ。
「え……これ、私に?」
「似合わないことしてるってわかってる。でも、どうしてもきみにあげたくて」
きみの時間を僕にください。
「……花は好きじゃないって言ったのに」
そう告げるきみの表情は、完全に緩みきっていた。
僕の好きな表情だ。
#1 大好きな君に