「大切なものはなんですか?」
「愛だよ愛」
「うわー」
付き合いたての頃はなんだか恥ずかしくて、きゃーきゃー騒いで誤魔化してた。
月日を共に過ごしていくうちに、一緒にいることが当たり前になって。
今日、なんとなく昔した質問をしてみた。
「大切なものはなんですか?」
「愛だよ愛」
「うわー」
また同じこと言ってる。
変わったのは、あの頃よりもほんの少し大人になった私が、言葉は同じでもそこに秘められた感情は違ったもので。
恥ずかしさと、変わらないことへの嬉しさが入り交じったような甘いきもち。
「私もね、愛だよ愛」
#4 お金より大事なもの
確かめ合うように頬に触れる。
温かい体温。胸元に耳を当てれば生きている音がする。
「いつまでも傍にいるからね」
「喧嘩しても仲直りだよ」
そんなもの、互いの信頼関係がなければ成り立たないの、知ってるくせに。
今こうして隣にいないのは、私達の絆が足りなかった結果だね。
#3 絆
花は好きじゃないと言っていた。僕だって、好きな人に花をプレゼント……なんて柄じゃない。
ただ、これは一生のことだから。
きみに振り向いてほしくてやったこと。
「僕と付き合ってください!」
ピンク色の花束を前に、困惑するきみ。
「え……これ、私に?」
「似合わないことしてるってわかってる。でも、どうしてもきみにあげたくて」
きみの時間を僕にください。
「……花は好きじゃないって言ったのに」
そう告げるきみの表情は、完全に緩みきっていた。
僕の好きな表情だ。
#2 大好きな君に
希望とは、未来に望みをかけること。未来とは、今よりもっと先のこと。
私は希望。希望(きぼう)と書いて希望(のぞみ)。
お姉ちゃんは未来。未来(みらい)と書いて未来(みく)。
名前に不釣り合いな私。こんな名前、すきじゃない。
だけどお母さんが言うの。
「希望(のぞみ)はたったひとりしかいないんだからね」
そんなことないよ。
私じゃなくても希望(のぞみ)はいるよ。
世界中探せば同じ名前の子なんていくらでもいる。
だから私は家を出た。家族皆困らせた。
でもその度にお母さんが言うの。
「生きていればそれだけでいいの。お母さんはね、希望(のぞみ)がいないとだめなのよ」
あれから十年経った今ならわかる。
子供って大切だ。
私もお母さんと同じこと言ってる。
#1 たった1つの希望