ーキスってのには物凄い威力があると思う。
それなのに奴は尻が軽い。
意味も何もかも無視してしまえば、只口と口を合わせるだけの作業で、
やろうと思えば直ぐに出来てしまう。
けれども、キスには束縛の力がある。
やるのは容易であるのに、
意味の方ではずっとずっと締め付けてくる。
愛の証明で気軽に出来るような物では到底無い。
現に、結婚式では「誓いのキス」とかいう
人生を決定付けるような物として扱われている。
(でもって外国ではキスは挨拶代わりになってしまっているのだが)
だからキスは、本当に怖いな、と思う。
1000年先も変わらないものってなんだろうかと考えてみた。
「人間」という答えが思い浮かんだが、此れは物理的にも精神的にも変わるものだと思い直した。
どこぞの祇園精舎の鐘のように、きっとくるくる変わっていくに違いない。
倫理観だって、正義感だってあっという間に変わっていってしまう。
他にも思い浮かべようと必死に考えたものだが、私の愚鈍な頭では全くもって考えもつかない。
自分の考えつくものは人間の概念であるものばかりだから、人間が変えようと思えば変えられる。(神とか)
となると、意味で探求するのでなく、客観的に何かを見なければいけないのだが…
やはり何にも思い付かない。
誰か教えてくれないだろうか…。
彼に勿忘草を送った。
…彼は喜んで受け取ってくれた。
そう、そうでなければいけない。
彼は喜んでいる。 目に見えるほど明らかに。
私が彼に捧げてきた愛情は全くもって正しいもので有るのだし、
又彼も私のことを心から、それはもう、身が愛情で腐り果ててぐっちゃぐちゃに成ってしまうほどに、
私のことを、思ってくれている。
ねえ、そうでしょう、と彼の方を見やった。
…ほらね、彼は喜んでいる!
きっととっても、とーっても嬉しいのだろう!
勿忘草を一生懸命握り締めて、手が真っ白に成ってしまうほどに。
可愛い、可愛いねえ。
そんなに私のことを思ってくれているのね!
ならば私もその愛情に応えてあげなきゃ!
此れからも君の側に近寄るゴミ虫どもは、
私が一匹ずつ丁寧にプチリプチリと確実に潰していってあげる。
君の意見にそぐわない物は、
私が君の視界に映らないように影でぐちゅりぐちゅりときっちり殺して、跡形も無いようにしてあげる。
ね、だからさ!
此れからも愛しあっていこう!
全ては君と私、二人だけの儚く脆い、けれども強固な愛情で結ばれ守られた鳥籠を覆い隠すために!