『8月31日、午後5時』
やぁやぁ、お疲れ〜
神様みたいな誰かだよ〜
まぁ実の所、
千里眼や千里聴的なのを体得した
ただの人なんだけどね〜
ボクはこの国をね
のんびり眺めるのが
唯一の楽しみなんだ〜
8月最後の黄昏時
この時もね、
たくさんの声が聞こえるんだよ
月末のみに流れる
特別なテレビやラジオ番組
それを聞くと時の速さを痛感する声
今年も もう2/3が過ぎたと嘆く声
お盆休みも夏休みも
あらゆる休みが全部終わった悲しみの声
そしてなにより、
夏休みの宿題に追われる家族
この時はね、僕はきらいじゃないよ
この時ばかりは、
割と家族が一丸となって
究極の敵に立ち向かうでしょ?
そういうのって、
割といいなぁって思うんだ
まぁ全部の家には
当てはまらないらしいけど
さてさて、
残り少ない8月と言う時間を
楽しんでくれたまえ!
ん?ボクかい?
ボクはほら、
毎日が日曜日みたいなものだからね!
よーし、
これを聞かれたからには
ボクはそろそろ
逃げた方がいい気がしてきたぞ〜
じゃ!またね!
〜シロツメ ナナシ〜
248
『ふたり』
〜 一人の苦悩・二人の標 〜
―――人を信じる
この行為が いつからか
世界一怖い行為になった
怖くもあるし なにより
その加減が難しい気がする
どの程度信じるのか
どのぐらいの距離感か
自分の理想を押付けてないか
私は常に悩んでた
私と 誰か
私と あの人
私と あなた
私の悩みはいつも、人とのことだ
気の使いすぎ? 気にしすぎ?
……そうだとしても、とめれなかった
これが、私だから
これが私のデフォルトみたいだから
これを軸に、私は私を動かしていく
今の今は それしか無かった
今の 今までの自分を受け入れるのにも
相当時間はかかったし
今もまだまだ
受け入れきれてないところもある
悩んでいて思ったこと
私は常に、私と相談している
自分はここにいるのに
自分の中の自分と
自分と誰かのことを考えてる
どれだけひとりでいようとも
私はいつも 誰かを考えてる
ぁぁ、やっぱり人は…
ひとりじゃ生きられない
どれだけ孤独でも
どんなに避けても
いつも誰かを思ってる
それでもなんか…時々…
寂しいね―――
〜シロツメ ナナシ〜
248
『心の中の風景は』
〜星の図書館〜
「「バキッドカーン!!!」」
!?
おやおや、大丈夫ですか!?
随分派手な入室ですねぇ
屋根からここまで
一直線にぶち抜いて来るとは
ここが夢とはいえ
痛くないけど痛いでしょう
よいしょっと―――
……よし、
気持ちが整ったみたいですね
いやはや、
久しぶりに見ましたよ
「ダイナミックお邪魔します」は
星の栞を使った場合
大抵はテレポートのように
この図書館の周辺に着地したり
ふわっと飛ぶように
ここに来たりしますが…
っふふ、いえいえ、
あなたが大丈夫なら
ここも大丈夫ですからお気になさらず
まぁ今日は少し利用者さんがいますので
あなたは恥ずかしいでしょうけど
では 少々お待ちを
今、直しますんで―――(パチンッ)
さてさて、
今日はどうされました?
ダイナミックお邪魔しますを
しに来るぐらいには
なにか急いで調べたいことでも
あったんじゃないんですか?
―――ふむ
心の中の風景、ですか?
それはまた随分と
夢のあるような漠然としてるような
ふわっとした質問ですね
そうですねぇ
私から言えるのは それは
「全てが正解の世界」ですかね
見るのも、聞くのも、
掴むのも、叶えるのも、
楽しむのも、苦しむのも、
逃げ出すのも、向かえ打つのも、
滅ぼすのも、嘆くのも、
向き合うのも、酷いことするのも、
助けるのも、やっつけるのも、
治すのも、正すのも、
やり直すことも、消すことも、
ただ、私の場合は
それらの考えをその夢を見る人
あなた自身の中に
上手に吸収するお手伝いをするために
この星の図書館があると言った感じです
ただどうか、
人としての仁義だけは
忘れないでいて欲しいですね―――
それから、
言う必要もなかったので
特に言ってなかったのですが
実はこの図書館以外の外や景色っていうのは
一人ひとり見え方が全く違うんですよ?
景色が夜空な人
丘の上や草原の真ん中
不思議な街中に建ってたり
おおきな木の下に建ってたり
海の上や宇宙空間のような所にあったりと
皆さんほんとに、
ここの外を自由に想像していますよ
あなたも
その遊び心と自由を
悩みながら、向き合いながら
それをひとつずつ
良き方に持って行けることを
心から願ってますよ
もう行かれますか?
はい、また来るのを
お待ちしてますよ
……あ
ダイナミックお邪魔しますでも
私は構いませんからね〜
―――っふふ
〜シロツメ ナナシ〜
247
『夏草』
かつてここは
世界史上最大で最悪の
戦争が起こっていた
今 立っているこの場所こそが
その中心地である
今となってはわかりづらいが
この高低差がある街並みは
かつての爆撃から生まれた
その一撃によってできたその土地
今はそれを利用し、家々が建っている
街のハズレには
同じような形の地形
そこには
夏草が今も生い茂っています
その惨劇は
気の遠くなるようなその昔
この場所で本当に起きていたのだと
資料館のデータや記事に
残っているものを
我々は確認するので精一杯
それをホログラムで再現し
かつての惨劇を体験することも
今ではできるようになりました
そのようなことが起こったとは
現代の私たちでは
とてもじゃないですが、
考えられない事ですよね
たくさんの人たちが
その日その時の強さを
気が済むまで延々と
戦ったであろうこの場所
結局は
その自然と時間と生命力には、
かなうはずも無かった―――
国と国同士の戦い……
私たちはその惨劇を
二度と繰り返さないために
この地球に住むものとして
これからも多くの水と緑、
大地と命と幸せを一緒に
守っていきましょう
人間の起こしたかこの過ちを
もう二度と繰り返さないために―――
〜シロツメ ナナシ〜
247
『ここにある』
ここにある
俺はもうぼんやりとしか覚えてないけど
子どもの落書き、昔の俺が書いた
じいちゃんの顔の絵
じいちゃんと過した証
ここにある
生まれてすぐに
珍しい病気にかかって
わずか数ヶ月で虹の橋を渡った
俺の初めての飼い猫が
生きていた証
ここにある
借りパクしたまんまの
友人のゲームソフト
あいつはそれを今でもわかってて
俺に借りパクを
させたままで居させてくれてる
目に見える友情の証
ここにある
この世界に出ると
うそが多すぎて、
俺は苦しくてたまらなくなる…
だけど、たったひとつ
確実に真実がある
俺の……
俺のこの気持ちや感情
今感じてるこれらは 紛れもない真実
俺が俺らしく生きている証
ここにある
その日その時芽ばえる気持ち
これをたどっていくと
俺はどこに向かうんだろう
俺はひとつでも残したい
生きていた証を―――
〜シロツメ ナナシ〜
246