『夏草』
かつてここは
世界史上最大で最悪の
戦争が起こっていた
今 立っているこの場所こそが
その中心地である
今となってはわかりづらいが
この高低差がある街並みは
かつての爆撃から生まれた
その一撃によってできたその土地
今はそれを利用し、家々が建っている
街のハズレには
同じような形の地形
そこには
夏草が今も生い茂っています
その惨劇は
気の遠くなるようなその昔
この場所で本当に起きていたのだと
資料館のデータや記事に
残っているものを
我々は確認するので精一杯
それをホログラムで再現し
かつての惨劇を体験することも
今ではできるようになりました
そのようなことが起こったとは
現代の私たちでは
とてもじゃないですが、
考えられない事ですよね
たくさんの人たちが
その日その時の強さを
気が済むまで延々と
戦ったであろうこの場所
結局は
その自然と時間と生命力には、
かなうはずも無かった―――
国と国同士の戦い……
私たちはその惨劇を
二度と繰り返さないために
この地球に住むものとして
これからも多くの水と緑、
大地と命と幸せを一緒に
守っていきましょう
人間の起こしたかこの過ちを
もう二度と繰り返さないために―――
〜シロツメ ナナシ〜
247
『ここにある』
ここにある
俺はもうぼんやりとしか覚えてないけど
子どもの落書き、昔の俺が書いた
じいちゃんの顔の絵
じいちゃんと過した証
ここにある
生まれてすぐに
珍しい病気にかかって
わずか数ヶ月で虹の橋を渡った
俺の初めての飼い猫が
生きていた証
ここにある
借りパクしたまんまの
友人のゲームソフト
あいつはそれを今でもわかってて
俺に借りパクを
させたままで居させてくれてる
目に見える友情の証
ここにある
この世界に出ると
うそが多すぎて、
俺は苦しくてたまらなくなる…
だけど、たったひとつ
確実に真実がある
俺の……
俺のこの気持ちや感情
今感じてるこれらは 紛れもない真実
俺が俺らしく生きている証
ここにある
その日その時芽ばえる気持ち
これをたどっていくと
俺はどこに向かうんだろう
俺はひとつでも残したい
生きていた証を―――
〜シロツメ ナナシ〜
246
『素足のままで』
あの人は
私を惑わせた―――
人を信じて、人に期待して、
人に騙されて、人に裏切られて、
人に疲れて、人に苦しんで、
人から逃げて、人を避けて、
人がとことんキライになった……
たまたま、偶然、
差し伸べられる手もまた、
私はもう信じていいか分からなくて
伸びてくる手を振り払う
それでも何度もやってきて
いつの間にか私の心に
そっとそっと入り込んでる
私は怖かったし
追い出したかった
……だけど、
私が弱ってるのもまた事実で…
私は、いて欲しくはなかったけど
追い出すことをやめていた
その人は、
苦手ではあるけど
イヤではなかった
人はみんな手を替え品を替え
土足のまま私に近づいてくる
―――だけどその人は
表裏がないというか…
素足のままで上がってくるような感じ
……それはそれで綺麗ではない
ではないけど…、言うなら
疑いようがないってやつ
時々面倒だけど
そこに変な感覚は無いし
時々飛んでくる
小さな親切の断片
私でもわかるほどの
その人の素の感じが伝わってくる
……私は、それがなんか
いやじゃなかった
〜シロツメ ナナシ〜
245
『もう一歩だけ、』
今よりも、
もう一歩だけ、
昨日より、
もう一つだけ、
明日のために、
もう一度だけ、
「今の自分」を超えることを
私はずっと分からなかった
今だってまだよく分かってない
超えても喜びが薄くて…
それよりも他人を目標にする方が
何倍もやる気になったり
具体的だったりしてわかりやすい
超えた時の喜びもとても大きい
…けど、また超えられる
頑張って超えたのに
私が超えた人たちは
私をまた超えていく
超えては超され また超えて
超える喜びを感じてるはずなのに
なんだか途方もない感じがして
気がつけば
私は…、越えられなくなっていた
歩けど歩けど
人が私を超えていく
私の努力も頑張りも
割とあっさり
超えていく、越えていく、
私は思わず振り返る
自分の後ろを見たくなった
後ろはまるで真っ暗で
まえはまるで真っ白で
私は自分が分からない…
辛くなって思わず倒れ
何も無い空を見上げていた
何を求めてるんだっけ?
私はどうなりたいんだっけ?
たくさんの自問を繰り返して
たくさんの嘆きを吐き出して
たくさんの涙を流しまくって
私は、ゆっくり立ち上がって
今できる一歩を踏み出した
……できる
なんとか……できる、
もう、1歩だけ、
………もう 1歩だけ、
………―――もう一歩だけ、…!
〜シロツメ ナナシ〜
244
『見知らぬ街』
帰ってきた 自分の故郷
ちょっと暇だったから
身近な隣り街まで
気ままにドライブ
知ってる道で迷わないから
ほんとに気ままな 一人旅
道の駅ができてた
新しいスーパー建ってた
なんとなく好きだった
あの小店は駐車場に…
道は変わってない
けど広くなってた
綺麗に整えられていた
まだ工事中もあって
新しいバイパス通りになるのかな?
知らない道があって通ると
知ってるに繋がってて
便利になってた
チェーン店が繁盛してた
ここの店の名前変わってる
なんだかまるで 見知らぬ街に
来たような気分になっていた
―――ぉ、あいつの家
〜シロツメ ナナシ〜
243