『遠くの空へ』
好きな空を目指す
好きな空を走る
あさひがのぼる 東の空
雲がやってくる 南の空
日が明日へ行く 西の空
目指すは高見の 北の空
目指したい先を見る
登ってみたい上を見る
進んでみたい道を見る
会ってみたい人を見る
私の足の枷になる
過去の不安や悩みがある
私をとやかく言う声や
出来事たちが私を止める
わかる……わかる……よくわかる
進めばきっと、また起こる
だけどそれは、また無くす
私の明日は、無くさない
怖い、怖い、よくわかる
それでも明日はやってくる
だったら恐怖も連れていく
泣いて叫んで、連れていく
うずくまってもそのまま進む
私を笑う声しても
私は私を笑わない
同じ人を笑わない
進む、進む、ただ進む
行きたいところは遠いけど
近くを目指し、遠くを目指す
あゆみが遅くて情けない
そう思う日も沢山ある
それでも歩みは止めたくない
抜かれ、笑われ、惨めも惨め
それでも私は ただ進む
遠くの空で
待ってるあなたに
会うまでは―――
〜シロツメ ナナシ〜
239
『!マークじゃ足りない感情』
言葉にならない
って言うと
それはいちばん残念な回答だろう
だけど例えば
言葉よりも先に
表情よりも先に
手足が動くことは
感情を超えた衝動じゃないだろうか?
聞いた一言で
怒りのあまり 手が先に出る
いてもたってもいられず
その場所にすぐさま出て行っていたり
ショックのあまり
全く動けなくなるのも
それもまたひとつの衝動や行動だろうか?
聞いた一言が
もしもいいことになら
嬉しさのあまり気絶したりとか
楽しさのあまり腹筋崩壊とか
それらはまさに
!マークがいくつあっても
まったく足りないと言えるような
感情や気持ちの嵐じゃなかろうか―――ね?
〜シロツメ ナナシ〜
238
『君が見た景色』
〜同じ始まりを願った日〜
小さい頃から
どんなものなのか
気になってる景色がいくつか
一番上の景色
一番前の景色
一番中心の景色
一番人に囲まれた景色
私が知ってるのは
普通の場所
普通より下の順位
普通より隅の方の景色
人と関われない寂しさの中
そしてその多くは、
外から見ているばかりだったり
下からみあげる景色ばかり……
私の憧れのあの人は…
こんな……
私の景色を知ってるのだろうか?
もしも
私と同じこの景色を
知ってるなら…
知りながら始まったのなら、
それは本当に、あの人は
すごい頑張ったんだろうなぁ
って……心から思える
私は…
今の私を持ったままでも
どうやったら、
上に上に―――
前に前に―――
進んでいけるんだろう?
望む私を採り入れながら
元の私を持ちつつも
その時その時、
今より先に進んでいきたい
〜シロツメ ナナシ〜
237
『言葉にならないもの』
言葉にならないもの
伝えるのが難しいもの
探してみる
今の時代の、人との差
生活の違い、命の重さ
人のキズ、心のキズ
生きることの難しさ
幸福になっていいのかな?
だけど不幸になりたくない…
ありがたみを感じること
ひとつひとつを、忘れずに
当たり前に気づくこと
それが意外と忘れてる
大袈裟に喜ばなくてもいいけど
当たり前は当たり前じゃないことを
どうか忘れないでいて
幸せになって欲しいから
知ることを忘れないで
知って幸せなのと
知らずに幸せなのでは
その重さや有り難さが
きっと違って見えるから
そうするときっと
今よりもっと
あなたが何を大切にしたいかが
より多く見えてくると思うから
〜シロツメ ナナシ〜
236
『真夏の記憶』
「たしか……このあたり!」
こんな場所
来たことないはずなのに
この子はまるで
1度来たことがあるかのように
さっさとここまで来てしまった―――
―――
「手紙を取りに行きたい」
そう言い出した時は驚いたが
そういう事を言うかもしれない
……と言う予兆はチラホラあった
たまに見るテレビ番組で
こどもが誰かの転生者かもしれない
と言うのを見たことがあったが…
まさか自分のこどもが
その転生したこどもだとは
思いもしなかった。
なんとなくの
予兆っぽいものはあった
教えてないはずの
難しい漢字を 一部だが知ってたり
テレビ番組のある大自然の映像を見た時
「ここにある気がする――」
と、呟いたのを私は聞き逃さなかった
これはもしやと思い、
私はテレビ番組に
依頼と協力をお願いしてみた
今持ちうる情報を提供後
それは数ヶ月後に
一緒に探してもらえることとなった
―――
当時 過去の彼は
真夏の戦場の真っ只中
さらには真夏の炎天下の中……
彼はもう、限界が来ることを悟り
手紙を書いて握りしめていたという
だけどそれを
どこかの地面に埋めて隠したのだと
彼の魂(記憶)に残ってる情報を頼りに
ひとつずつそれを確かめに行く
知ってる漢字
なんとなく見覚えのある服
うっすら知ってるテレビ番組の土地
彼の知っているであろう乗り物
ひとつずつ当てはめ
過去の人物と
その人の行動経路を辿っていく
―――そして
「たしか……このあたり!」
そこはかつて
戦場となっていた場所だと言う
ここは……
海岸と密林の境目のような場所
このまるで変哲もない下に
手紙を埋めたんだという
結構広いから手分けして探した方が?と提案するが、この子は既に掘り始めていた。自分たちは試しにそれを信じてみることにする。
―――ゆっくり掘ること十数分
信じられなかった
出てきた―――
―――確かに手紙だった
ボロボロで内容も
ギリギリ読めるか読めないか
そんな手紙がでてきた
その字は……
今のこの子にどことなく似ていた
特にひらがなの丸みや
漢字のはらい方の部分は
よく似ていたのだった
この手紙は誰に当てたものなの?
「…自分の好きな人に書いたやつ」
多分帰ったら結婚する
……的なやつだったのだろう
その思いを届けるために、
「帰る為」に ずっと持っていたのだろう
番組は、
その手紙の名前の女性を
探してくれた
すると、
―――見つかった
その人は、施設でほぼ寝たきりだが
まだご存命だというのだ
この子は、
会いに行くことを望んだ
この場所からはおよそ3日はかかった
―――ちょっとばかし
田舎の方だった
話は通っていたらしく
施設に到着すると、
割とスムーズに通してくれた
いよいよの 対面
「…………―――」
この子は、
しばらく様子を見ていたが
微かに面影を感じたのだろうか?
なにか思うところがあるのだろうか?
試す訳じゃないが…
一応覚えてる特徴を聞いてみた
「首のところにホクロが2つ」
―――あった
「あさがおが好きだった」
―――正解、よく育ててたらしい
「虫が平気」
―――今は違うらしいが
かつてはどんな虫もすでで捕まえてたらしい
「取れた歯を飲み込んだことがある」
―――え!?ホントだったの!?
と、親族が驚いていた
これを聞いて親族は
確信に近づいたらしい
すると、
……彼女が目を覚ました
彼女からしたらこの子は
誰かわかるわけはなかったが
まだ意思疎通は出来なくもなかったらしく
かつての手紙を見せてみると
それを目を細めゆっくり見てみる
(……読めんねぇ)
さすがに見えないらしく
代わりに読んでいく
かつての彼の思いを
……読み終えて彼女は
(……カンカンとって)
と言って来た
カンカン?
親族が持ち出したのは
随分古そうなお菓子か海苔かが
入ってたであろう缶の入れ物
「これ、海苔入ってたでしょ?」
この子はズバリと言い当てる
その中を開けると
普段から入れ物に使ってるらしい
その中の少しボロい封筒
―――手紙だ
ゆっくりとこの子に渡す
その中は、
筆で認められていた
「かなり達筆な字」で私は読めなかった
読める?
「……うん」
すごい………
彼はゆっくりと読んでいく―――
「………………………」
気がつくと彼は、
声なく泣いていた
……読んでいい?
「………話す」
ん、わかった
簡単にまとめると
彼女は戦争が終わっても
彼の訃報がくるまで
ずっと待ってたらしい
ずっと待ち続け……そして、
帰らぬ人となったことを知らされる
彼女はそれを知っても
誰ともしばらく合わなかったらしい
所が歳を重ねると
やはり縁談の話なども上がってくる
彼の死を知りつつも
それでも縁談のさなかでも
信じて待っていたらしい
だが彼女は
彼が最後に言った約束を守った
『もし……もしも帰らなかったら…
それでも君には、
絶対に幸せになって欲しい
それをどうか……約束して欲しい』
子を儲け、旦那を支え、
この家庭を幸せに
自分も少しでも幸せになるため、と
そして、
もしも……もしも叶うなら
「あなた」にそれを証明するために
気がつけば2人は
手を握りあっていた
「「―――ただいま」」
(……おかえりなさい、「あなた」)
〜シロツメ ナナシ〜
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