『誰かしら?』
「まったく…
いつまで待たせんのかしら!?」
…ドンドンドン!
……あら?こんな時間に……
誰かしら?
(ガチャ)
は〜い、おはようございます〜
「あなたね!?何時と思ってんの!?」
ふぇ!?え、え??
「もう開店時間よ!?時計わかる!?」
え、……開店…
「一体いつまで待たせてんのよ!?」
あ、はい…すみません……
あの……申し訳ありません…
「いいから!もういいの!?入っても!」
いえ…その……
本日は…定休日……
「…は、えぇ…!?
じ、時間……ぇ…」
あとそれと…普段の開店時間
だとしても…まだ
あと1時間ほど…ありますので…
また…良い時に来ていただけますか?
「……―――」
スタスタスタ……
あ…!
そしてお客様は
色んな感情を抱えて
そそくさとその場を後にした
ー後日ー
一生懸命に
何事も無かったかのように
どこか少しバツが悪そうに
開店時間に来てくれた
〜シロツメ ナナシ〜
『芽吹きのとき』
始まりも―――
タイミングも―――
きっかけも―――
――――――みんな―――違う
あなたの芽吹きが始まるのは
それは
奇跡のような
シンデレラストーリー
それは
いつの間にか登ってた
積み重ねの数々
それは
苦労に苦労を重ねた
血のにじむ努力の日々
それは
障壁だらけの
険しすぎる道のり
それは
地獄の日々をぬけ
復活劇のような1歩
それは
社会の中に
独り立ち向かう孤独
それは
偶然出会うことが出来た
大切な仲間との出会い
挫折し、苦労し、
時に理解に苦しみ、
自他の才能に悩んでしまう
みんな違う
受け入れ合う難しさ
己の才さえ己を殺し
待てど暮らせど芽吹きが来ず…
私に無いの?と
何度嘆いてきたことか
いつしか数えること辞めた
超えて超えて、ただ越えて…
忘れた頃にやってくる
あなたに来たる、芽吹きのとき―――
〜シロツメ ナナシ〜
『あの日の温もり』
――黒猫のクロがいなくなって、
はや数日が経とうとしていた―――
今はキジトラ猫のトラが
ひとりのんびりと過ごしてる
クロは、夜になると
私の股の間で寝るのが習慣だった
…こっちはヒヤヒヤしながら
日々寝てるのだけど…
なんとも不思議に
器用に寝る子だった
トラもいつの間にか真似て
寝ていることがある
周期は分からないが
どちらかが寝ている
…私は長いこと
安眠できてなかったかもしれない…
でもいつも
どちらかが寝ていると
湯たんぽのような猫特有の
ヌクヌクが伝わってくる
今朝も股の間の温もりで
目を覚ます
眠気まなこでトラを呼ぶ
ンニャーン
と、なぜか私の頭上から声がする
……え?
見上げるとそこに確かにトラがいた
布団の中に目をやると
そこには誰もいなかった
〜シロツメ ナナシ〜
『cute!』
「えーcuteとは
日本語で かわいいという語源に当たるがキュートには美しさや魅力も含まれておりかわいいには愛らしさや守りたくなる気持ちなども含まれていて日本でも海外でも広い範囲で可愛いと同様に使われていて、」
もーちょっとちょっとあんた…
いきなり何言い出すの?
馬鹿の一つ覚え?
「何を言うか!
AIで調べるすべを手に入れた俺が
馬鹿なわけあるか!」
あんたがそんなもん使ってんの!?
そんなことしたら猫に小判じゃない!
「にゃにおぅ!?」
ぁーごめん間違えた
豚に真珠ね。猫に失礼だわ
「えーっと、AI調べ……
って意味一緒じゃい!
あと誰が豚だ!ぶひー!」
……っち、使いこなしてるわね…
っていうか念の為
個人でお調べ下さいって言っときなさい?
「詳しいことは個人でお調べ下さい!
……ってなんで??」
念の為よ
通りすがりの人が間違って覚えたら
責任取れないでしょ?
「まぁたしかに…って、
ちょい大袈裟じゃね…?」
…それより、
もう少しこれからも目の前で
あれこれ言えるかと思ったけど…
意味が伝わるのもいいのか悪いのか…
あんたは馬鹿だから愛されるのに
「まって そこまで言うことなくない!?
あと今 さりげなく
変なこと ぶっちゃけなかった!?」
馬鹿じゃなくなったら……
あんたに何が残ると思ってんの!?
「くっ……そこまで言うなら
AIよ!俺が馬鹿じゃなくなったら
ちゃんと残るものあるよな!?」
(お待ちください…………
お待ちください……………
再起動に入ります……………)
「……あれ?スマホが落ちた!?
処理落ち!?なんで!?おい!
しっかりしてくれー!!!」
AIなりの気遣い…かしらね…?
バカが残るみたいでよかった
……色んな意味で。
〜シロツメ ナナシ〜
『記録』
曖昧な記憶よりも確かな記録!
……なんて言うのを
どっかの通販番組が言ってた
記録も立派な自分の記憶
いちばん身近なのだと
メモがまさにそうだと思うし
スマホのカメラもビデオもそう
その辺のただの紙も
しっかり書けば
神をも凌ぐ紙になる
記録であり、記憶である
画像や音声ならば
余程の細工がない限り
それは確かなタイムテレビ
過去限定だけどね
だけど記録があれば
この世で唯一 過去だけは
絶対に嘘をつかない
記録を辿り、
さらなる記憶を拾い上げ
未来に繋ぐ記録にもなる
あなたの記録
たまには思い出してみる?
〜シロツメ ナナシ〜