空模様は、たまに自分の心模様とリンクしている。
天気って、自分の心に影響を与えるものだと思う。晴れていたら、気分爽快、はつらつとした心持ちになれるけど、雨が降っていたり、黒い雲が空を覆っていると、気分も落ち込み、鬱屈とした心持ちになる。
鏡って心霊現象や、良くないこと(鏡を割ると良くないことが起こる)みたいな感じで、ちょっと怖いものだけど、なんでそんな印象をつけられたんだろう?
鏡って普通、自分の容姿を映して身だしなみを整えるのにすごく便利な道具って扱いなのに、どうしてなんだろう?
「おい、エリオ。これ、なんだ?」
「ん?なんですかボス?……あっ!それ!」
襟尾が手で開くのを静止しようとする前に、津詰は"それ"を見てしまった。
「これって、昔の俺?なんでこんなもん持ってんだよ」
「あちゃー、バレましたか、じゃあ、しょうがないですね」
襟尾は顔を下に下げて、赤面して言った。
「オレが初めてボスの顔を見た、講義のプリントです。20年前のボスが逮捕した事件って、結構勉強になるらしくて、講義に取り上げられたんですよ、そこでオレは、ボスに惚れました。捨てたくても捨てられないんです」
「ははーん、そういうことか。可愛いヤツめ」
津詰は襟尾の髪をわしゃわしゃと描き撫でて宥めた。
オレ、襟尾純の刑事としての誇らしさは、やっぱりボスと働いてる点だ。
オレが刑事として働くモチベーションの一つであるボスは、インテリダンディ、肉体の逞しさ、愛嬌など、数え切れないほどの魅力が詰まっている。そんなボスにオレがお供としてついていけるなんて夢にも見てなかった。
そんなボスをオレは、死なせまいと毎日トレーニングに励む。なんて生きがいのある毎日なのか!
「今日は、ちょっと遅くなりすぎましたね」
「おう、すっかり眠くなっちまったな」
2人はゆったりとした足取りで冷めきったコンクリートの上を歩いていた。津詰の方は大きな口を開けて、欠伸をした。
しばらく歩いたところで目の前に橋が差し掛かった。
津詰は橋の名前を見ると立ち止まった。
「どうしたんですか?ボス」
「あぁ、いやなんでもない」
橋名板には"駒形橋"とあった。
「この橋の上からじゃ海なんか到底見えませんけど、夜の海ってどんな感じなんでしょうね」
「夜の海はブラックホールみたいなもんだな。入ると結構流されることがたまにあるんだってよ。そのせいで、毎年夜の海に入った人が沖に流される事故が結構あるんだな、これが」
「じゃあ、今度一緒に行きません?夜の海」
「なんでそうなるんだよ。話の流れ的に行かないってなるだろ、普通」
「いやぁ、ブラックホールならオレがボスと一緒に入ったらずっと一緒に居れるじゃないですか」
「俺を殺す気か」
「まぁ、冗談ですよ。そんな事しなくてもオレたちはずっと一緒ですからね」