オレの毎朝のルーティーンのひとつはボスに頭を撫でてもらうことだ。
「エリオ、おはよう」
ボスの大きい手でオレの髪をワサワサと掻き混ぜる。これがなきゃオレの一日は始まらない。
オレはこれのおかげで毎朝幸福で満たされるのだが、たまにこれがいつまで続くのかとも不安になる。俺たちは警察だ。いつ命の危機が訪れるのかオレには分からない。
このちっぽけな当たり前が永遠に続けばいいのに。
夜が遅くなると街の明かりは僕を攻撃してくる。
最近の東京はどこへ行っても暗くない。まるで昔の大英帝国のように。
夜の東京を探索するのは楽しいが、物騒なことに巻き込まれることもある。だが、東京というひとつの文化を体験できるのは非常に趣深い。
こんなことをしているから、不眠症になってしまったのだ。
今日は七夕。一年に一度だけ織姫と彦星が会う日だ。
「ボス、どんなお願い書きますか?」
「うーん、そうだなぁ、健康でいられますようにとかか?」
「ベタすぎません?それ。ある意味耄碌してません?」
「してねぇわ!てか何でだよ」
オレが短冊に書くことなんてひとつに決まってる。
それは、
〜ボスと今後も一緒にいられますように〜
そんなことを書いている時、空では流れ星がひとつ、走り抜けていった。
友達との思い出……
やっぱり、たわいもない日常をべちゃくちゃ喋りながら過ごしたことかな……
「ボス、あれって何座ですか?」
「オリオン座だろ?知らないのか」
「知ってますよ。ボスがどのくらいの教養を持ってるか試したんですよ」
「俺をなんだと思ってるんだ?こんにゃろー」
「ボスっ、く、くすぐったいですよ!」
「でも、よくこんな都会でも星空が綺麗に見えますよね……」
「まあ、最近はだいぶ空気が綺麗になったからな」
「ふーん……。まあ、ボスの顔も綺麗ですけどね」
「どういう意味で言ってんだ、それ」
冬の寒い夜の帰り道、ふと空を見上げた2人はやけに距離が近かった。