黒山 治郎

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5/3/2024, 11:33:36 AM

あ、うん
あれ、これ、それ
そうだった、そうだよね

習慣に縮められた言葉のやり取り
継続してきた間柄の結果だけを出す
暗黙の了解に則って応え合わせ

何時からだったか
神社の狛犬よろしくと
阿吽の呼吸に努めたのは

否、知らず知らずに努めたのは
愛を実らせる方面にか

すとん

腑に落ちてからは、この当たり前に
若かりし頃の互いの密やかな恋心や
努力の影を垣間見る事が出来た

このぐらいは、誰でも…等と
双方のこれ迄や在り方を
容易く値踏みして良い訳はない

私達の関係は私達にしか、なし得なかった
二人だけの寄り添い方なのだから
だから、今日ぐらいは 互いの好きな酒を傾けて
この秘密が続いた事をお祝いしましょうか。

              ー 二人だけの秘密 ー

5/2/2024, 11:56:58 AM

醜い錆色と罵られた私を
今まさに掬おうとする手が
瞳いっぱいに映る

信じられない
信じたくない

少しの施しをして
満足感が満ちれば
月の様に背を向け、お前も消える

毛も爪もない剥き出しの皮膚に
無遠慮に牙を突き立てる

それでも

口元を濡らす血は暖かくて
自分はどれだけ凍えていたのか
その事実に打ちのめされ
傷だらけでも私を救い出そうとする
その手に抗う気はもう起きなかった

お願いだ、これ以上
優しくしないで(おいていかないで)


「貴女って暖かいのね
わたし、泣いてしまいそうよ」


垂らされた意図に上も下も無かった なんて
仏ですら知らぬ結末だろうに。

              ー 優しくしないで ー