何もいらない
「天才」
そう呼ばれる人間になりたかった。
100年に1人の逸材だとか、神に愛された人間だとか。
一度でいいからそんなことを言われてみたい。
それさえ貰えるのなら、他には何もいらない。
口先だけで謙虚な言葉を吐き、裏では愉悦に浸ってみたい。
見下したい、持つ者として、持たざる者を。
可哀想ねと、血反吐を吐くような努力をしたって、あんたは此処へは来れないのよと、いつかに私が言われた言葉を、そっくりそのまま返してやりたい。
嗚呼、嗚呼。
私はこんな人間だから、こんな時にだけ神に祈る。
私が天才と呼ばれないのなら、せめて、せめて
この世の全ての偽りの天才を、地獄の底に落としてください。
そうしてもらえるのなら、他には何もいらないから
神様へ
私が生きてきたのは、たった十数年にすぎないというのに、世界は随分と発展しました
しかし、何故なのでしょう
昔より、心が満たされる瞬間が減ったと思うのです
それは、世界のせいではないのかもしれません
私が大人になっただけの話なのかもしれません
ただ私は、そのことが酷く哀しいのです
人の心とは、難儀なものですね
幼い頃に焦がれた大人に、私は今なれているでしょうか
誰よりも、ずっと
このためなら人生賭けてもいいと思ったんだ
人生だけじゃない
情熱も、時間も、若さも青さも、全部
そう思えるものに出会えたんだ
この気持ちだけは、きっと誰にも負けやしない
他の人から見たら、馬鹿げた夢かもしれない
それでもいいんだ、自分に誇れる自分でいたいから
僕は今、誰よりも幸せだよ
星空の下で
星が降る夜に船を出して
抱えきれないほど大きな夢を語り合った
湖面に映った星屑は綺麗で
濃紺のベルベットに、真珠を溢したみたいとあなたは笑った
でもそれよりも、星の映るあなたの瞳の方が美しいだなんて
そんな歯の浮くようなセリフは、私の胸の中に留めておいた
見つめられると
あなたに見つめられると、いつも心臓が不規則な音を立てる。
どうしてそんなに愛おしそうに見つめるの?
あなたの瞳に、わたしはどう映っているのかな。
覗いてみたくて、そっと顔を近づける。
勘違いしたあなたに落とされたキスは、幸せな味がした。