テーマ:雨に佇む #287
雨に佇む小さい女の子がいた。
傘を持っていなかったようで、
お店の屋根で雨宿りしていた。
会社帰りに折り畳み傘が何故か2つ、
カバンに入っていた。
私は一度そのこの前を通り過ぎた。
その時雨の音に紛れて歌が聞こえた。
通り過ぎ際に見ると女の子は歌っていた。
雨で濡れているのに輝くような笑顔で。
私は思わずその女の子に近づき、
傘を渡した。
女の子は戸惑っていた。
私だってこんな行動をした自身に驚いている。
「あの……」
女の子は私をまっすぐ見ていた。
「ありがとうございます」
雨が降っているのに憂鬱だと感じなかった。
それは私にとって雨に佇むその子が
太陽のような存在だったからかもしれない。
テーマ:私の日記帳 #286
私の日記帳は堅苦しかった。
やったこと、起きた出来事、やれなかったこと、
明日から(今後から)どうするか……。
また見ようとなんて思えないような、
そんな日記帳だった。
でも、最近は違う。
私の日記帳は変わった。
物語を一日一個考えることにした。
キーワードだけでもいい、
終わりだけでもいい。
曲の歌詞を写してそれから連想しても、
イラストから連想してもいい。
そしたら日記が苦じゃなくなった。
続けたいと思える、
そういう気持ちが私には足りなかったんだ。
そう思った。
※
♡3600ありがとうございました
テーマ:向かい合わせ #285
「向かい合わせに座るとなんか……恥ずかしいね」
彼女はそう言って頬を赤らめた。
何だか僕も恥ずかしくなってきてしまって顔をそらす。
「そうだね」
この年になって初めての彼女なんて恥ずかしいが、
彼女らきっと気づいている。
「ごめん。頼りなくて」
僕が彼女にボソッというと彼女は言った。
「それはお互い様だよ」
テーマ:やるせない気持ち #284
やるせない気持ちでいる。
受験生なのに勉強一つしていない。
小説ばかり書いている私に。
やるせない気持ちでいる。
それをわかっているのに
動き出せない私に。
苦労するのはわかっているのに。
テーマ:海へ #283
「海へ行こう」
急に言われて今に至る。
夕焼けが沈んで海の中に溶けていく。
何だか寂しい気持ちになる。
「ここに来ると自分がちっぽけに見えるんだ」
俺は横にいる友人に目を向ける。
彼は流木に腰掛け海を見ていた。
「上手く行かなかった時、叱られた時、
悔しい時……。いろんな時に来るんだけど、
いつもここに来ると思う」
俺も彼と同じように流木に腰掛ける。
ザッパーンと波打つ音が遠くから聞こえる。
「海も太陽も、ここには大きいものばっかりだ。
俺の悩みなんてなんてちっぽけなんだろうって。
そう思わないか?」
俺はもう一度海を見つめる友人を見た。
そして、フッと笑う。
「な、なんだよ」
「フン。お前に慰められるくらい、
俺はしょげて見えるかよ。そう思ってな」
そんな俺に友人はいった。
「ハハ。心配されるくらい抱えないでくれ」
俺は視線を海に戻す。
もう半分以上太陽を呑み込んでいる海を。
「ありがとな」
友人に聞こえるか聞こえないかくらいの声で言う。
フンと鼻を鳴らすのが隣で聞こえた。