狼星

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5/29/2023, 2:00:03 PM

テーマ:「ごめんね」 #197

ごめんね。
なんて、言ってやるか。
今回ばかりは絶対に折れない。
だって僕は悪くないもん。
兄ちゃんだからっていつもいつも、
僕が謝れって言われるけど。
悪いのは僕じゃない。
いっつも都合が悪くなると母さんに引っ付くの、
なんなんだよ。
母さんに引っ付けば許されるんだったら
僕だって……。

妹は僕を上目遣いで見ている。
何なんだ。
言いたいことがあるならはっきり言え。
そう言わんばかりに睨みつける。
すると目を真っ赤にした妹が小さく呟いた。
「ごめんね」

5/28/2023, 12:10:43 PM

テーマ:半袖 #196

半袖着たい暑い季節が
もう、すぐそこまで来ている気がする。
暑さに負け時と体を動かすが、
暑さに負けてダウン。
もっと体力つけなきゃなぁ……。

5/27/2023, 12:23:08 PM

テーマ:天国と地獄 #195

「てんごくとじこくはつながっているの」
急に娘が話し始めた話は、
私が話したことのない、
教えたこともない話だった。
「え?」
私は思わず聞き返してしまった。
娘はつみきをしながら話している。
「わるいひとはじこく、いいひとはてんごくにいくの」
私は口を噤んで娘の話に耳を傾ける。
「てんごくにはね、やさしいてんしさんがいるの。
 じこくにはね、こわーいあくまさんがいるの」
胎内記憶というやつなのか…。
でもお腹の中にいたときの話ではないみたい。
「まま」
私はボーッとして聞いていた。
娘に呼ばれるまでずっと。
私は夫に娘が話したことを話すと、
「何も教えてないなら胎内記憶じゃなくて、それよりも前の話なのかも。胎内記憶っていうのは言葉の意味通りお腹の中の記憶だから……」
それにしても、少し怖かった。
教えてないことだし、ちゃんと文になっていた。
いつもは単語しか話さない娘。
嬉しいような、少し怖いような。
今はもう大人になって、
その時のことは覚えていないらしいけど。
私はあの日のことを忘れられない。

5/26/2023, 1:45:16 PM

テーマ:月に願いを #194

月に願いを言うと叶えてくれるんだって。
誰かが言っていた。
星じゃないの?
私はそう思った。
月に願いを言うと星よりも早く叶えてくれるの。
誰かは言った。
あなたなら何を願う?

5/25/2023, 12:34:41 PM

テーマ:いつまでも降り止まない、雨 #193

『毎日雨、雨、雨。つまらん季節だな』
憂鬱そうにベランダに目を向け呟くのは、
僕のベットの上で何故か膝を抱え座っているあやかし。
「君、人間といていいの?」
僕はそう言って彼の隣に座る。
『あやかしというのは人間と違って自由だ。
 ワイが何をしていようが
 誰かにとやかく言われる筋合いはない』
フンと鼻を鳴らす。
いや、僕が困っているんだけどなぁ。
そう心のなかで思うとジロリと目を向けられる。
僕はびくっとして自然に背筋が伸びる。
『人間はいつまでも降り止まない、
 雨に退屈だと思わんのか』
「退屈だとは思わないよ。
 だって、こんなに音が溢れている」
『音?』
僕は黙って目を閉じる。
窓に雨が叩きつけられる音がする。
裏山の方からはカエルの鳴き声がかすかに聞こえる。
退屈なんか感じないさ。
僕が目を開けるとあやかしは僕をじっと見つめていた。何も言わずただまっすぐに見つめられる。
『気に入った』
ただそれだけを言うと、
フッとそのあやかしは消えてしまった。

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