狼星

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4/18/2023, 2:08:10 PM

テーマ:無色の世界 #157

僕は無色の世界に住んでいた。
生まれつき、
色というものが分からなかった。
みんな白黒に見えているらしい。
色が同じように見えている僕には、
色の名前なんてわからないけど。
だからといって不便だと感じたことはない。
たまにケチャップとマヨネーズを間違えたりするけど。
一番困ったのは学生時代、
美術の授業だった。
色の判別がわからないため、
絵を塗っていてもしっくり来なかった。
しまいにはからかわれたりもする。
「花はこんな色していない」だの、
「変な色の虫」だの……。
でも、何を言われても僕はなんとも思わなかった。
みんなには色が見えていて、僕には見えていない。
ただそれだけのことだから。

「私ね。あなたと一緒で住む世界が無色に見えるの」
働いて一年目のとき、そういった女性がいた。
あぁ、僕だけじゃないんだと思った。
「私は生まれたときは見えていたの。今思うとその当たり前が当たり前じゃなかったんだって、すごく実感しているの」
「色がある世界は今の無色の世界よりずっといい?」
僕は彼女に聞いた。
「勿論、きれいだとは思う。あなたも一度見てみたら世界が変わって見えるわ」
彼女は、働きながら大学院に通う学生だった。
色について研究しているらしく、
いつか無色の世界を変えて見せる!! 
そう意気込んでいた。
彼女を見て、僕は素敵だなと思った。
自分と同じ境遇の人でも、
それに対して変化をもたらそうという
努力をしている人もいるんだなぁ、と。
彼女の研究が成功したら、
どれだけの人が救われるんだろう。
「貴方にも、見せてあげる。美しい色彩の世界を」
彼女はそう言って会社を2年で辞めていった。
彼女の研究が成功しますように。
心の中でそっと願った。

それから十数年。
彼女の研究は世界に認められていた。
十数年前、
一緒に働いていたときよりもお互い歳を取っていたが、
彼女の目は僕の無色の世界でも輝いていた。
彼女は有名になった。
でも、時折手紙をくれた。
そして何通か手紙が来たあと、
僕宛に彼女から小包が届いた。
なんだろうと開けてみると、
その中に便箋。
『貴方に美しい色彩の世界を』
短い文が書かれていた。
それは彼女の運営する会社のキャッチコピーだ。
彼女の去り際に言っていた言葉を思い出した。
そして中から一つの眼鏡が出てきた。
彼女が長い研究の末、辿り着いた答えだ。
僕はその眼鏡をかけた。

辺りがキラキラして見えた。
僕の知らない世界がそこには広がっていた。

4/17/2023, 1:01:10 PM

テーマ:桜散る #156

貴方は言ったよね?
桜散る広場でまた会おうって……。

君がいなくなって、
8度目の春が来た。
私は広場のベンチに座り、
ぼーっと貴方のことを考えた。
「約束、守ってよ……」
貴方のことを思うと自然と涙が溢れてくる。
泣いてもあなたは帰ってこないのに。
今年も桜が散った。
私の貴方への思いは散ることを知らない。
辛かったのなら言ってほしかった。
嫌なことがあったなら、
私も一緒にどこか遠くへ二人で逃げたって良かった。

私をおいて逝かないで。

4/16/2023, 11:53:08 AM

テーマ:ここではない、どこかで #155

ここではない、どこかで
君と会える未来はあったのだろうか。
ここで出会えたことは
例え良くない状況下でも
なにか意味があるのではないかと思う。

君はそう思わないかもしれない。
でも僕は君と今、
この場所で会えたことが奇跡だと思う。

ここではない、どこかで
会えたとしても、
僕は君に対してどんな対応をするかなんてわからない
もしかしたら道路やまちなかの人混みの中
自分が気が付かないときに会う可能性だってある。

君が僕のことを
例え、嫌っていたとしても
僕は今、この場所で
君に会えたことが嬉しい。

4/15/2023, 1:36:41 PM

テーマ:届かぬ想い #154

遠くにいる人
もう会うことができない人
会いたい人はいますか?
届かぬ想いを抱えている人はいますか?

僕は近くに住んでいる、
同い年の女子に恋をした。
会えない距離じゃない。
話そうと思えばいつでも話せる。
でも彼女に最近好きな人ができたらしい。
僕と違う高校の人らしい。
それを聞いたとき、
隠していた思いが僕の中で膨れ上がった。
抑えなければいけないのに、
抑えられない自分がいた。

もっと早くに彼女に告白していれば、
彼女の隣りにいたのは自分だったのかな。
僕は一人、
天井を見上げた。
スマホを触りかけて、
彼女のことが浮かんで、
スマホを置いて手で目を覆う。
涙は出ていない。
なのにどうしてこんなにも胸が苦しいのだろう。
その時、
僕が彼女に恋をしていることに気がついたんだ。
いや、ずっと前から知っていたのかもしれない。
この気持ちが恋というものだと。
でも、認められずにいた。
素直になれずにいた。
それが、僕の選んでしまった結果だ。
それが、僕の彼女に対する恋だった。

秘めていた想いが僕を揺らす。
もう遅いのに。
もう過去には戻れないのに。
早く気づけよ、後悔する前に。
届かぬ想いとなってしまう前に……。



♡2100ありがとうございます(^^)

4/14/2023, 1:20:37 PM

テーマ:神様へ #153

神様へ
どうして私はこの世にいるの?
私がこの世にいる意味はあるの?

私はいつもそう思っている。
明日が怖くて仕方がない。
夜が明けてほしくない。
そんな私はこの世にいる意味がある?
もっと生きたいと思いながら
病気と戦っている人はたくさんいると思う。
死に向かっていってしまっている人は
この世にたくさんいると思う。

私は苦しみもなく生きていて、
どうして彼らは苦しみながら生きなくてはいけないの?
国のために戦っているのに
たくさんの命がこの世から何故なくなってしまうの?

もう何もかもわからないよ。
「ねぇ、神様」

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