【明日、もし晴れたら】
メイクしてめいっぱいにお洒落して出かける よりも
布団を干したい
【花咲いて】
花咲いて あなたの声も 微笑みも
薄れぬ香りに かき消されゆく
【もしもタイムマシンがあったなら】
行く末を 貴方の生きた その先を
知ればいつでも 会いに行くから
ただひとつ 遺体の行方を 知るだけで
私はいつでも 会いに行けるの
【遠い日の記憶】
これは多分、偽りの記憶だろう。
いや、そんな格好つけた言い方をするほどのものでもない。
自分に都合の良いように改変された記憶。認識。
頭で考えることなんて、心に感じることなんて、簡単に揺らぐのだから。
だから、そう。私が彼をあんなに純粋に、あんなにひたむきに好いていたことなんて。
きっと、絶対。
「結婚おめでとう」
なかったんだから。
【終わりにしよう】
「終わりにしよう」
つんと澄んだ、すこし低めの声。大好きな声。
「もう、終わりにしようよ。こんなこと」
それが、なんだろう。一つも聞きのがしたくない声がつむぐ言葉が、耳をすべっていく。だって。
「やっぱ、お遊びでやることじゃないからさ。ね?」
こんなこと。こんなこと言われるはずがない。お遊びじゃないのに。本気なのに。
……それとも、ああ、彼女は。お遊びだったのか。
「そう、だね」
うれしかった。大好きな彼女が、自分のことを好きだと言ってくれて。
うれしかった。大好きな彼女が、自分と肌を重ねることを良しとしてくれて。
うれしかった。だってこんなこと、ふつうじゃないと思っていたから。
うれしかった。幸せだった。
私だけが。
そんなことにも、気づけないほど。
考えてみれば、当たり前だ。私が大好きな人が私を好きでいてくれたなんて、どれほどの確率だろう。
ましてふつうではない関係性で。
ああ、やっぱり。人並みではない私が人並みの幸せをつかもうなんて。
「終わりにしよう」