僕は暗所恐怖症だった。
目を開けてるのに見えない、情報が得られない。
その感覚がどうにも嫌で、というより怖くて。
身体中が情報を得ようと奮闘するも、
結果は逆で、他の感覚、聴覚や触覚なども混乱で消えていく。
でも何故かはわからないが、今この状況を僕は楽しんでいる。
街中が真っ暗に包まれているが、
この空間は不思議と怖くないのだ。
目の前の小さなクリスマスツリーのおかげなのか、
両隣の暖かい友人のおかげなのか。
恐怖どころか、安堵と微笑みを得た僕は、
明るくなるまで友人と飲み笑い語り合った。
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季節外れのキンモクセイ
オレンジ色のキンモクセイ
冬に咲くとは思わんよ
寒かろうに寒かろうに
マフラー貸したろ思ったけれど
触れたらはらはら散ってしもうた
雪みたいに消えてしもうた
胸の高鳴りばれたのだろか
溶けて消えてなくなった
さよならさよならキンモクセイ
さよならさよなら恋心
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キンモクセイ花言葉 : 初恋 など
僕は昔、蝶が好きだったんです。
色鮮やかで儚げで、素敵でしょう?
だから母さんに頼んで、標本キットを買ってもらったんです。
でも、でも学校でそのことを話したら、
気持ち悪いって
気持ち悪いって言われたんです。
いやぁ。理解できないなぁ。
こんなに綺麗なのに。
あの美しさがわからなかったんです。可哀想に。
それで、いつだったかな、次の年、ぐらいに
国語で某作品を習ったんです。
いや、もうあんまり覚えてないんですけどね。
確か、なんだっけ、
“そうかそうか、つまり君はそんなやつなんだな”
だったかな。
あの作品を読んで僕は驚きました、理解できなかった。
もうカッとなってしまって、いやぁ恥ずかしい話なんですが
大きな声でわめいて、教科書を破って…。
先生がたくさん駆けつけました。
それ以来私は学校も行かず、家に篭もりきりでした。
あぁすみません、話が長くなってしまった
えぇと、だから要するに、
あなたのことも理解できないなぁ、と。
どうしてそんなこと言うんですか。
いえ、僕ももう子供じゃないので、怒りませんよ。えぇ。
純粋な疑問です。どこが嫌なんです?
教えてくださいよ、お願いします。
あなたよりも何十倍も美しいでしょう、蝶は。
こんなに儚げで愛おしくて切なくて、
舞う姿はもちろんですがこうして見ると更にその美しさに心撃たれるでしょう、ねぇ。そうでしょう。
それをあなたたちは口を揃えて気持ち悪いだなんて、
あなたたちがおかしいですよ、あなたがおかしい、おかしい。
あぁ、すみません責めるつもりはないんですよ、すみません、
カッとなる癖がなかなか抜けなくて、あぁ。
気をつけてるんですけどね、でも今回はしょうがないと思うんです。だって、だってあなた、信用していたんです。
僕も大人ですからね、蝶の美しさがわからない人も居ますよ。
子供時代に学んだんです、そのことは。だから美しいものをわかる人だけ見せてるんです、えぇ。あなたがわかってくれないなんて、どうして、どうしてでしょうか。あぁ…。
…すみません、失礼しました。取り乱してしまった。
大丈夫、もう大丈夫です、落ち着きました。
ですからね、お座り下さい。少し休んでいきませんか。
僕はあなたと話したい、理解し合いたい、それだけです。
あるいは、もし、もしも理解し合えないのなら…。
あのですね、あなた、僕は標本は今でも続けているんです。