なんという名のうただったか
今はもう覚えていない
物心つくまえに、聴いたうた
どこで知ったのかも、思い出せない
でも、そのうたが、とても好きだった
うたっていると、景色が鮮やかになった
だから、ずっとうたっていた
いまでもたまにメロディの断片が頭にうかぶ
ラララ ラララ 途切れ途切れ、繰り返す
歌詞もわからないけれど
ラララ、ラララ、ラララ、
あ、今日はちょっと、景色が鮮やかだ。
[ラララ]
仕事の帰り道、どこからか焼き肉の匂いがした
たらふく吸い込んで、晩ごはんの白飯をかきこんだ
[風が運ぶもの]
はじめまして。
あなたはこの星に忠誠を誓った、
潔(きよ)き住人ですか?
[はい]
そうなのですね。それはとても素晴らしいです。
あなたは日常的にこの星の しずく を
潔き住人たちと与えあっていますか?
[はい]
そうなのですね。それはとても素晴らしいです。
あなたは日常的にこの星の しずく を
潔き住人以外の他者に当然の善意を持って勧めますか?
[はい]
そうなのですね。とてもそれは素晴らしいです。
-------只今あなたが 適格者 であると判定しました-------
適格者 さん
いまからこの星の しずく を その からだ
に取り込んでもらいます。よろしいですね?
[はい]
それは賞賛されるべき決断ですね。
それではあなたはこの星の
しずく すなわち この星の おもいやり を
こころから 敬い 崇拝し 信じますか?
[はい]
わかりした。
では只今より しずく を
取り込む 儀式 にうつります。
よろしいですね?
[はい]
少しばかり苦しいですが、
しずく に忠誠を誓った適格者であれば
これから起きることに耐えられるということは、
この星に古くからある ことわり です。
では 開始します
[............]
[............]
[............]
( からだ が 破裂 する音)
-------適格者検体実験成功アラーム音-------
----ここまでが、
幼いみなさんへの今回のおはなしです。
このおはなしのように、しずく を からだ
に取り込むことで、
この星の しずく が あらたにふえるのです。
しずく
はこうしてこの星の聖なるしくみを
崇拝するものたちのあいだで
くりかえし受け継がれていくのです。
からだ が破裂したあと、弾け飛んだ しずく は
適切な処理を経て、この星の市民に再供給されます。
この星に生きるものたちにとって、
しずく は生命のみなもとであることは、
なんどもおはなししましたね。
みなさんも、
「潔き住人」、
そして、「適格者」になることを目指して、
しずく を
すなわち この星の おもいやり を
こころから 敬い 崇拝し 信じましょう。
そして、この星を、類稀なる清きおもいやりで
満たし、素晴らしい世界を作り上げていきましょう。
では、おはなしのおわり、ごあいさつのじかんです。
みなさん、美しい声で復唱してくださいね。
「この星に忠誠を。
この星に敬意を。
そしてこの星の しずく を崇拝します。」
[[[ この星に忠誠を。
この星に敬意を。
そしてこの星の しずく を崇拝します。]]]
[question]
オノマトペ「ひらり」などの語感について、
個人的な印象の話。
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【ひらり】と【ひらひら】
ひらひら
・ひらひらとスカートを揺らす
・ひらひらと花びらが舞い踊る
「ひらひら」はその場所で対象物が揺れている印象を受けるが、対象物がそのまま物理的に遠くへ行ってしまう感覚はしない。
「ひら・ひら」と、同じ音を繰り返しているからかもしれない。同じ場所で美しく揺れている。そんな感覚。
ひらり
・ひらりとスカートを翻す
・ひらりと身をかわす
「ひらり」になると、対象物はそれっきり、
もう元の場所には戻ってこないような儚さを感じる。
「ひらり」、と身体などの向きを変えて、変えた先にそのまま行ってしまうような印象を受けるが、
マイナスなイメージはなく、儚さの中にも潔さがある。
「ひらり」は「ひらひら」よりも、もっと軽やかな印象。
ちなみに、
「はらり」は何かが下に向かって落ちるイメージ。
やはり物理的な軽さを感じるが、ポジティブなイメージはあまり感じない。
対象物そのものの時間が経過して、
「はらり」という音自体の「色」が少し褪せているイメージ。
「ほろり」は少し、かなしい。
切ない、とはちょっと違う。
不安なことがあったときや、何かに感慨深さを感じたとき、それぞれ目の前の出来事に対して何かしら安心する要素が生まれると、少しかなしくて、でも少しほっとして、涙がおちる感覚。
涙の種類も、悔しさや怒りからは些か遠いところにある気がする。
そして、「ほろり」と落ちる涙はあたたかいと思う。
オノマトペっておもしろい。今回のお題を見て、
宮沢賢治が作品の中で、
独創的かつユニークなオノマトペを多用していたことを思い出した。代表的なところでいえば、
<どっどど どどうど どどうと どどう>
(風の又三郎)
<よだかは高くきしきしきし と鳴きました>
(よだかの星)
など。
自由に音を生み出すことや、
自由に音に意味をつけられるところが、
オノマトペの醍醐味だと思う。
一方、日本語学校などでは、
学習の際にぶつかる壁のひとつがオノマトペだという話も聞いたことがある。
日本語話者どうしの「感覚」によって成立する
(成立してしまう)会話特有の、説明の難しさがあるのかもしれない。
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少し調べてみたら「日本語オノマトペ辞典」という本が出ているとのこと。今度図書館で借りてみることにした。
※追記
ちくま文庫から、「宮沢賢治のオノマトペ集」
という本が出版されています。図書館で借りましたが、個人的にはとても興味深く読めました。おすすめです。
[ひらり]
記憶の中のひなたぼっこ
あなたがとなりにいて、絵本を読み聞かせてくれた
あのときの、昼下がりのあたたかさ、
あなたがいたから感じられたぬくもり
わたしのなかの宝物
絵本を読み終えて、2人でお昼寝をした
ねむい目をこすりながらわたしが起きたのは夕方
「よく起きたね。よく寝てたよ。」
あの笑顔が忘れられない
記憶を手繰り寄せる
あの笑顔は変わらずにずっとそばにいる
みえずとも、逢えずとも、ずっと
大好きな祖父へ
あなたの存在がずっと支えです
これからも、みまもっていてね
いつかわたしがそっちに行ったら
あなたが大好きだったアイスをたらふくたべよう
[あの日の温もり]