オノマトペ「ひらり」などの語感について、
個人的な印象の話。
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【ひらり】と【ひらひら】
ひらひら
・ひらひらとスカートを揺らす
・ひらひらと花びらが舞い踊る
「ひらひら」はその場所で対象物が揺れている印象を受けるが、対象物がそのまま物理的に遠くへ行ってしまう感覚はしない。
「ひら・ひら」と、同じ音を繰り返しているからかもしれない。同じ場所で美しく揺れている。そんな感覚。
ひらり
・ひらりとスカートを翻す
・ひらりと身をかわす
「ひらり」になると、対象物はそれっきり、
もう元の場所には戻ってこないような儚さを感じる。
「ひらり」、と身体などの向きを変えて、変えた先にそのまま行ってしまうような印象を受けるが、
マイナスなイメージはなく、儚さの中にも潔さがある。
「ひらり」は「ひらひら」よりも、もっと軽やかな印象。
ちなみに、
「はらり」は何かが下に向かって落ちるイメージ。
やはり物理的な軽さを感じるが、ポジティブなイメージはあまり感じない。
対象物そのものの時間が経過して、
「はらり」という音自体の「色」が少し褪せているイメージ。
「ほろり」は少し、かなしい。
切ない、とはちょっと違う。
不安なことがあったときや、何かに感慨深さを感じたとき、それぞれ目の前の出来事に対して何かしら安心する要素が生まれると、少しかなしくて、でも少しほっとして、涙がおちる感覚。
涙の種類も、悔しさや怒りからは些か遠いところにある気がする。
そして、「ほろり」と落ちる涙はあたたかいと思う。
オノマトペっておもしろい。今回のお題を見て、
宮沢賢治が作品の中で、
独創的かつユニークなオノマトペを多用していたことを思い出した。代表的なところでいえば、
<どっどど どどうど どどうと どどう>
(風の又三郎)
<よだかは高くきしきしきし と鳴きました>
(よだかの星)
など。
自由に音を生み出すことや、
自由に音に意味をつけられるところが、
オノマトペの醍醐味だと思う。
一方、日本語学校などでは、
学習の際にぶつかる壁のひとつがオノマトペだという話も聞いたことがある。
日本語話者どうしの「感覚」によって成立する
(成立してしまう)会話特有の、説明の難しさがあるのかもしれない。
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少し調べてみたら「日本語オノマトペ辞典」という本が出ているとのこと。今度図書館で借りてみることにした。
※追記
ちくま文庫から、「宮沢賢治のオノマトペ集」
という本が出版されています。図書館で借りましたが、個人的にはとても興味深く読めました。おすすめです。
[ひらり]
3/3/2025, 3:40:16 PM