泣いていない と
両目から
大量の雫を溢しながら
口を窄めた
生きていて良かった
いなくなってしまうのかと
思った とか
それこそ 死んでも
言えない
【何故泣くの?と聞かれたから】
トンネルの中を歩く
ザッザッザッ と
自分の歩く 音が響く
歩みが中心に差し掛かった時に
コッ コッ コッ と
革靴の音が後ろから聞こえてきた
思わず後ろを振り返る
誰もいない
気のせいかと安堵するも
再び
コッ コッ コッ と
後ろから聞こえてくる
コツ コツ コツ コツ
音の間隔は徐々に短くなる
はっきりと聞こえているのに
後ろには誰もいない
【足音】
よく歌う 大好きな
なつまつりの曲
あの歌を口ずさむと
いつだって
夏が 永遠になる気がした
浴衣姿の君がいて
雑多な屋台道をかき分けて
神社の石段で線香花火を見下ろし
君に伝えたいことは言えず
そして
打ち上げ花火が
空に消えていくのだ
【終わらない夏】
心に響いた小説や漫画を
何度も 何度も
読み返す時
好きな歌手やバンドの
過去のライブ映像を
何回も何回も
見返す時
誕生日や記念日なんかに
友人や家族から
突然のプレゼントを貰った時
長いとは言えない人生を
振り返ってみても
案外 たくさん思い出した
これからも
そういった感情に
出会いたい
【‼︎マークじゃ足りない感情】
思えば あれは
偶然の出会いだった
人々が行き交う 路上
周りの音が全て消えて
君の声だけが聞こえて
気がつけば
曲が終わっていた
名の無い君に 声をかけて
君を皆に知らせようと
無我夢中で 共に走った
走って
歌って
走って
叫んで
顔を上げると いつの間か
壇上に立っていて
ライトの花畑が
一面に 一面に 広がっていた
隣の君をみる
夢にまで見た場所に立ち
マイクを高らかに挙げた君には
どう写っているのだろうか
どうか 一緒の気持ちであることを
願いながら
息を大きく吸った
【君が見た景色】