「ピックアップ来いピックアップ来いピックアップ来いピックアップ来い」
「何ぶつぶつ言っているの、怖」
隣で友人が横にしたスマホを両手で持ちながら、眉間に皺を寄せて低い声で呟いていたので、思わず本音が出てしまった。何とでも言うが良い、と友人はスマホに視線を向けたまま、今日なのよ、と尚も低い声で続ける。
「これから推しの新規絵SSRのガチャが始まるんだよ……」
「ああ、この前ハマっているって言っていたゲームの話?」
「そう!」
私は友人の横に並び、スマホを覗き込む。白スーツを華麗に着こなしたイケメンが片手に花束を抱え、画面越しに爽やかに微笑みを浮かべている。友人曰く、普段は黒を基調とした服装を見にまとうキャラらしい。私はこのゲームをやってはいないが、確かに手元に欲しくなる絵だ。ただでさえ白スーツはカッコ良いのに、イケメンが着ようものなら鬼に金棒。さらに好きなキャラであるなら魅力も増し増しである。
あっ始まった!と友人が早速、10連と書かれた部分を指でタップする。画面が変わり、星空の背景に光の塊が10個現れた。もう一度、友人が画面をタッチするも、友人はあからさまに渋い表情になる。
「あーはいはいはい、すぐ来ないよねうん知ってる」
続けて2回、3回、と画面をタップするも友人は苦い顔を浮かべるばかり。何回も引き続けるもイケメンは来ず。あーーーもう嫌だ!とついに友人は痺れを切らした。
「このガチャ渋すぎる……ピックアップ仕事しろや……!」
「現実のガチャポンもそうだけど、欲しいやつほど引けないよね……」
「うう……物欲センサーが仕事していて笑えない」
こうなったらあんた引いてくんない?と友人が勢いをつけて私にスマホを押し付ける。
「ここは無欲な第三者の方が良い気がする!」
「ええ……良いの?最後の10回なんでしょ?」
「あんたなら行ける気がする!お願いっ」
「しょうがないなぁ……」
引けなくても文句言わないでね、と一応釘を刺しておく。力強く頷く友人を後ろに画面をタップした。すると切り替わった画面の星空が虹色に輝いた。これはもしかして!と友人は口元に両手を押さえる。
「来た?来た?来た?」
「いやさっきも何回か虹色になってけど結局来なかったしまだ分から……」
私が言葉を言い終わらないうちに、友人のスマホ画面から男性の良い声がした。
『少し恥ずかしいけど、君の為ならたまには着ても良いかな』
ボイスが終わったと同時に、友人のスマホいっぱいに白スーツのイケメンが現れた。
「ぎゃーーーーーーー嘘嘘嘘!?来た来た来た来た!!」
「まさか来るとは思わなかった……」
引いた私ですらも驚きを隠せない。確か確率は3パーセントあるかないかだよね。ほんとありがとう!と友人が半分咽び泣きながら私に抱きつく。
「持つべきものは無欲の友だわ」
「そんなたまたまでしょ」
「その調子でもう一回……」
「流石に二回目は来ないでしょ」
友人の許可が降りたので、再度画面をタップしたらまさかの二枚目が出て、友人が泡を吹いて倒れかけた。改めて確率って怖いなって思う。
【奇跡をもう一度】
【たそがれ】
オレンジ色の空に見惚れる
日が落ちるのが早くなって
心がざわつく
からだや気持ちが重くても
歩く足だけは急かしてしまう
遠くでカラスの鳴き声がする
早く帰ろうと
言っているみたいだ
【秋🍁】
令和の日本よ
ご存知だろうか
日本 という気候に
四季があることを
最近はどうも
忘れているらしい
昨今の気候は
寒い!暑い!寒い!暑い!
の繰り返しな気がしてならないのは
自分だけだろうか
読書
美術館
美味しい食べ物
どれも 涼しい時に
楽しみたいのだが
難しくなるつつある 現在
【窓から見える景色】
電車に揺られる
流れる風景を見つめると
風になった気分だ
イヤホンを耳にあてながら
音の海を泳ぐ風になる
満員電車の処世術だ
【形の無いもの】
空気は 気温や環境で変化し
感情は 心次第で変化する
水は器によって 保たれて
感情は理性という
器によって 保たれる
風は 海と陸などに振り回されて
感情は 突然の衝動に振り回される
火は 燃料で燃え盛り
感情は 恋や恨みで燃え盛る
土は 長い年月で隆起沈殿 安定し
感情は 人生の波で隆起沈殿し
一人一人の礎となる