【命が燃え尽きるまで】
剣を 銃を 刀を
握るのをやめない
国の為 とか
そんな大それた
理由なんてない
自分のために戦う
今 生きたいから
戦う
それだけだ
【夜明け前】
彼は誰時
夜が明ける方へ目を向ける
有明の空は 薄く明るい
ほのぼの染まる 黎明に
遠くで 鶏が鳴く
【本気の恋】
つくづく思うこと
リアル 創作物は
色恋沙汰に溢れている
恋愛至上主義 というか
他人の恋路や空想の話を
見聞きする分には 面白いが
「これ」を自分が「する」のには
てんで 興味がない
誰かが言っていた
変と恋は
心が変になるから 恋
確かに漢字は
とてもよく似ている
どのくらい心が変になれば
本気なのかは 興味ある
【喪失感】
いつも仕事帰りに寄る、行きつけのバーカウンターに先客がいた。
先客は日本人離れした顔立ちで、薄い金色の少しウェーブのかかった男だった。歳は三十歳以上であるだろう雰囲気で、雑誌から飛び出して来たのではないかという程、端正な見た目をしている。ラフに着ているシャツも、彼が着ると、どこかのブランドかと思わせる。世の中見た目が全てをこれほどまでに憎んだことはない。
私はスーツの襟を緩めながら男の一つ隣に座った。一人掛け分の距離越しに男が、貴方も常連かい?と私に話しかける。
「雰囲気が慣れてそうだから、つい決めつけてしまったけど」
男の言うように、私もこのバーには何度も通っているのでそう、と肯定する。ここ落ち着くよね、カクテルも良いもの作ってくれるし、と男は自分の持っているグラスを少し傾ける。紺とピンクのグラデーションが綺麗なカクテルである。綺麗だな、と思わず私が呟くと、でしょう、と男は微笑む。薄く口先をあげるだけでも絵になるのは狡い。私はいつも頼むカクテルをカウンターへ注文をし、男に話しかけた。
「君のことを、どこかで見たことがある気がするんだが……気のせいだろうか」
「それ、ここのバーに来る人大体に言われる。雑誌モデルをやってるんだ」
「へぇ。どうりで」
顔が整っている訳だ。とは言わなかったが、内心で呟いておく。ここのバーに置ける「それ」は口説くも同然だからだ。波長やタイミングなどがあるのでおいそれと言うことは私の理に反する。
俺、もう暫くここには来ないつもりで来たんだ、と男はカクテルを眺めながら、うっとりと呟く。
「自分の身近に射止めたい人、見つけたから。だからここは今日で最後」
貴方も素敵な出会いがありますように、と男は私に向かって柔らかい微笑みを向けた。
生で見るそれは、ファンにとっては天に昇る程の幸福だろうが、今の私にとってはいきなり後ろから突き落とされるような心地だった。これは推測だが、男の手にしているカクテルは「射止めたい人」のイメージなのだろう。愛おしそうに見つめる視線が熱っぽいのは、決して気のせいではない。
私はありがとう、と、実る前に終わった一目惚れと決別し、カウンターにうんとアルコールの効いたカクテルを追加注文した。
【世界に一つだけ】
あなたもわたしも
違う種を持っていて
あなただけの華を
咲かせよう みたいな
有名な歌はあるけれど
躍起に華を咲かせなくても
いいのではないだろうか
だって 種の時点で
世界で二つとないのだから
咲けない華があっても良い
咲かない華があっても良い
いつか咲く 花があっても
良いだろう
失わないように 腐らないように
育てていければ良い