わたしがあなたを直視できない理由。
【眩しくて】
アイツは自分の言いたいことだけ言って、さっさと次の行動に移ってしまうから、こっちから言葉を返すことはなかなかできない。
もっとゆっくり生きればいいのに、と言ったことはあるが、目もくれないまま「無理」とバッサリ切られた。
じゃ、なんで自分と歩調が合わない俺と一緒にいるのか。
さりげなく聞いたら、「落ち着くから?」と半ば疑問形で返された。
それから、珍しく一瞬だけ手を止めて、
「自分が周りとずれてるのは分かってる。けどこんな自分を一番受け入れてくれたのはお前だったから」
「…!え、そんなん…」
もう告白じゃん。
そう言おうと口を開きかけた途端、アイツはまた目の前の作業に戻ってしまった。
忙しなく手を動かしながら、アイツはそっけなく言った。
「ま、自分が好きで一緒にいるだけ。お前がうんざりしてたらごめんだけど」
そうだよ、もううんざりだよ。
お前のせっかちさには。
無理やり隙間をつくらなきゃ、会話もできやしない。
……もう、切り札使うしかないか。
絶対にその手を止めさせる、必殺技を。
「逆にさ、なんで俺がお前と一緒にいるのかとか、聞かないのかよ」
「考えたこともなかったな。なんで?」
「……好きだから」
「なんて?」
「好きだからだよ、お前が」
「………っ?」
案の定、完全に動きが止まった。
さあ、これからゆっくり話をしようじゃないか。
俺の気が済むまで、ゆっっっくりと。
【タイミング】
俺の心のオアシスはお前だよ
って言ったらぶん殴られた
まったく、照れ隠しがすぎる
って言ったらしばらく口を利いてくれなくなった
かわいいヤツめ
【オアシス】
_____
どこまでも一途。
それはあちらも。
泣き疲れて眠ってしまったお前の顔を見つめる。
腫らした瞼に、掠れた目尻や頬。
赤らんだその鼻は詰まってしまったようで、口で寝息をたてている。
俺のためだけに涙を流してくれたお前が、愛おしかった。
多分起きたあと「ひでえ顔してるから」って、しばらく顔を見せてくれないだろうから、今のうちに目に焼き付けておこうと思う。
あどけない寝顔。
泣いたあとだからか、余計に幼く見える。
こんなになるまで耐えさせてしまって、申し訳なかった。
でも、自分がやったこと、後悔してない。
起きたら、改めて話そう。
今はとりあえず、寝ているお前を甘やかしたい。
どんな夢を見ているんだろう、また涙がにじんだその目元を、そっと撫でた。
【涙の跡】
え、まっ、またいつか???
明日も明後日も毎日会うのに「またいつか」??
これから一緒に住む自覚持って、ホントに。
【またいつか】
______
同棲初日、就寝前のこと。