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アイツは自分の言いたいことだけ言って、さっさと次の行動に移ってしまうから、こっちから言葉を返すことはなかなかできない。
もっとゆっくり生きればいいのに、と言ったことはあるが、目もくれないまま「無理」とバッサリ切られた。


じゃ、なんで自分と歩調が合わない俺と一緒にいるのか。
さりげなく聞いたら、「落ち着くから?」と半ば疑問形で返された。
それから、珍しく一瞬だけ手を止めて、
「自分が周りとずれてるのは分かってる。けどこんな自分を一番受け入れてくれたのはお前だったから」
「…!え、そんなん…」
もう告白じゃん。
そう言おうと口を開きかけた途端、アイツはまた目の前の作業に戻ってしまった。

忙しなく手を動かしながら、アイツはそっけなく言った。
「ま、自分が好きで一緒にいるだけ。お前がうんざりしてたらごめんだけど」






そうだよ、もううんざりだよ。
お前のせっかちさには。
無理やり隙間をつくらなきゃ、会話もできやしない。
……もう、切り札使うしかないか。
絶対にその手を止めさせる、必殺技を。



「逆にさ、なんで俺がお前と一緒にいるのかとか、聞かないのかよ」
「考えたこともなかったな。なんで?」
「……好きだから」
「なんて?」
「好きだからだよ、お前が」


「………っ?」

案の定、完全に動きが止まった。




さあ、これからゆっくり話をしようじゃないか。
俺の気が済むまで、ゆっっっくりと。



【タイミング】

7/30/2025, 5:13:54 AM