大切な景色の思い出を絵におさめる。
その全てに、君の姿を付け足して。
「全部に描かなくてもいいのに」
と君に言われたけど、
「未完成のまま終わらせるつもり?」
と返してやった。
【君と見た景色】
「大切なものが無くなった」
と言われたので、仕方なく一緒に探すことにした。
家全体をくまなく探す。
普段見ないところまで注意深く見て、ずいぶん長い時間探したのに、一向に「見つかった」と言わない。
「なあ、一体どこにあるんだよ?」
苛立ち混じりに聞いたら、
「ここ」
そう言いながら、抱き締められた。
なんだよ、
人がせっかく苦労して探しまわったのに、
「無くなってなんかねえじゃん…」
【どこ?】
自分が言う「大好き」に、どれくらいの気持ちが詰まっているか、アイツは知らないし、
アイツが返す「大好き」に、どれくらいの気持ちが詰まっているか、自分は知らない。
でも、互いにちゃんと想いのこもった「大好き」を持ってる。
その事実だけで十分。
【大好き】
友人には、好きな人がいた。
けれどその人は、他に好きな人がいた。
だから、好きな人がうたた寝してるところにそっと告白して、気持ちを諦めた、と。
話す友人は、いつもと変わらない調子だった。
それならと、ある日、机に突っ伏して寝ている友人、もとい、好きな人の耳元で、「愛してる」と呟いてみた。
気持ちは消えなかった。
【叶わぬ夢】
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叶わぬ夢、叶わぬ恋を、諦めるための行動。
けど、それで諦められるなら、苦労してない。
アイツの首のあたりから香った、花の香り。
最初は、似合わないことするなと思っただけだった。
けれど、数日、数週間、それが続いて、
どうして香水を使うようになったのか、誰のためなのか、どうしても気になって。
何をしていても、あの花の香りがよみがえる。
そのたびに、焦りとも、苛立ちともつかない感情が心を支配する。
アイツが自分以外のヤツに染まるのが嫌なんだと気づいたときには、もう遅かった。
それは、初めて患うには、重すぎる恋だった。
【花の香りと共に】