もう長いこと、耳元で鼻をすする音としゃくりあげる声が聞こえる。
いつか振りの再会。
自分に非があるから仕方ないのだが、会ったとたんに一発殴られた。そのあとぼろぼろ涙をこぼすその男に息ができないほど強く抱き締められ、そこからずっとこのままだ。
どうにかして泣き止ませようとひたすら背中を撫でているが、なかなか落ち着かない。
「そんなに会いたかったのか?」と茶化し気味に聞いたら、「会いたかった」と蚊の鳴くような声で至極真剣に返された。
それから、「次離れたら、絶対許さない」とも。
その一言で悟った。離れていた間、いや、それ以前からこの男が抱えていた想いの丈を。
それは一人で溜め込み続けるには大きすぎたことも。
決めた。
もう離れない。
もう俺のせいで苦しい思いをさせたりしない。
それを伝えると、さらに嗚咽が激しくなってしまった。
俺はこいつを泣き止ませるためにも、自分の決意をちゃんとこいつに証明するためにも、また背中を撫で続けるしかなかった。
【泣かないで】
______
一緒にいるのが当たり前だからこそ、気づかない気持ちもある。
春。
同じクラスになった人に一目惚れして告白した。
普通に振られた。
その代わり、友達になった。
私の春は終わった。
夏。
部活の先輩に告白した。
が、彼女がいると言われた。
春に告白した友達に慰められた。
私の夏は終わった。
秋。
出会いがなくて落ち込んでいた。
誰にも興味が湧かなかった。
花を咲かせていた恋バナも、季節の移ろいとともに枯れていった。
そのまま、私の秋は過ぎていった。
そして冬。
春に告白した人に告白された。
会話の中に混ぜられた、さらりとした告白だった。
驚いて、考えて、悩んだ。
その末、私は付き合ってみることにした。
なんだかぎこちないけれど、穏やかな空気。
冬はまだ、はじまったばかりだ。
【冬のはじまり】
愛。
その一言では片付けられない、この気持ち。
【愛情】
お前の存在を好いてしまってから、
俺はずっと、微熱続き。
【微熱】
ダメだ。
抜け出さなきゃ。這い上がらなきゃ。
アイツに迷惑かけたくない。
関係を壊したくない。
忘れなきゃ。
そう思っても、些細なことでまた落ちていくこの恋は、誰のせいにすればいい?
【落ちていく】