鏡に映った自分の姿が大嫌いだけど、
君が「かわいい」って言ってくれるから、
もう少しこのままでいようと思う。
【鏡】
日記。
自分で書いたものじゃない。
自分にとって特別だった人間の遺品。
生きてる時はそんな素振りなかったのに、遺品整理のときにあの日記を読んで、アイツが自分に向けている気持ちを知ってしまった。
まさか、死んでから両想いになるなんて。
あれは、アイツが生きていた証、アイツも自分のことを好いていてくれた証だから、絶対に捨てたりしないし、誰にも捨てさせない。
【いつまでも捨てられないもの】
友人の葬式が終わったあと。何となく海を見にきた。
真夜中の、だれもいない海。
暗い、暗い海。
何となく、友人に似ていた。
目をつぶって、波の打ち寄せる音に耳を傾ける。
アイツとは、この波みたいに、気づかぬうちに離れては、また知らぬうちに元の場所へ戻っている。そんな距離感だったように思う。
会えば言い争ったり喧嘩したりが日常茶飯事だったが、自分にとってはそれがちょうど良くて。
気づいたら、その日常の中で、確固たる信頼関係が築かれていた。
その信頼を壊したくなくて、アイツにむけてはいけない想いが芽生えてからは、それを必死に押し殺して接してきた。
ただ一緒に生きていければそれで良かったのに、まさか、今死ぬなんて。しかも、アイツが先に。
近くにいたときには押さえられていたあの気持ちが、いざ離れてからは溢れてきて止まらない。
会いたい。
会いたい。
「……」
不意に、波の音に混じって、名前を呼ぶ声がした気がして、目を開けた。
声の主を探すが、そこには真っ暗な海があるばかり。
でも、なんだか、そこに『いる』気がする。会える気がする。
…会いに行こう。会って、この気持ちを、今まで抱えていた分の「だいすき」を全部吐き出すんだ。
そうして気づけば、夜の海に身を沈めていた。
【夜の海】
「………」
「ねえ」
「ん?」
「自転車の後ろに彼女のせて走るって、青春よね」
「うん」
「うちらもやろうよ」
「いいよ」
「あんたがこいで、後ろにあたしが乗って、」
「前うちかよ」
「当たり前やろ?あたし非力やし」
「ウソ乙、あんたのあだ名『ゴリラ姫』なの忘れたんか?」
「それ呼んでんのもうあんただけやで?てか話そらすなし」
「そらさせるような話題振るあんたが悪い」
「さいですか。そんであれ、チャリの話や、近所の坂バーッて下ったり、ちょっと遠く行ってみたり、」
「うん」
「なーんもないところとか?あとは海が見える道路を走りたい」
「走らせんのはうちや」
「分かっとるし。んで、どっかに崖が下にある壊れたガードレールがあったら、そこに飛び込んで、
一緒にしにたい」
「…………」
「あれ、嫌やった?」
「…いやいやいや、ダメやろそれは、それでどっちか生き残ったらどうすんねん」
「確かに」
「しぬなら確実に一緒にしねる方法にするわ」
「えへへ、そんなにあたしのこと考えてくれてたんや、大好き」
「自分の為やしうちのほうがあんたのこと好きや」
【自転車に乗って】
※皆さんは絶対に真似しないでください。
私の心の健康は、
推しと音楽によって保たれています。
それだけです。
【心の健康】