「この食べ物は、好き?」
「好き」
「この色は?」
「好き」
「このドラマは?」
「うーん…嫌い」
「この虫は?」
「え、嫌い嫌い、大嫌い」
「この絵は?」
「あんまり好きじゃない」
「この写真は?」
「うーん、ちょっと好き?」
「この空間は?」
「結構好きかな」
「じゃあ、僕のことは?」
「…世界で一番大好きっ!」
【好き嫌い】
「やりたいことがない」
「じゃあやることあげる」
「何」
「俺のために生きて」
「無理」
「何で、」
「もうやってるから。それよりもっと別のことやりたい」
「…なら、旅行でも行く?」
「行く!」
「…」
嬉しいやら悲しいやら。
【やりたいこと】
『朝日はあったかいねぇ』
幼いころ、抱き締められながら母によく言われた言葉。
あの頃は、母にそういわれることが嬉しかった。
小学校にあがったころ、そんな母が事故で亡くなった。
死を理解していなかったあの頃でも、もうあの言葉を聞くことはないのだと子供心に気づいて、どうしようもなく悲しくなって、三日三晩泣き続けた。
あれから、小中高と、あの言葉を一度も聞くことなく生活してきた。
それなりに充実した生活を送って、恋人もできて、もうあの言葉のことも忘れかけていた。
けれど、何度目かのデートの別れ際に恒例となっていたハグをした時、恋人が言った。
「朝日って、あったかいな」
約10年ぶりに聞いたその言葉。
母の姿を思い出して、恋人もさらに愛おしくなって、「ありがとう」と言いながらしばらく泣いた。
【朝日の温もり】
あ、
また間違えた。
こっちが正しい路だったのか。
何度も繰り返したバッドエンド。
どれだけ進んでも、結局は最初(タイトル)に戻される。
慣れた手付きで、間違えた選択肢の記憶(セーブデータ)を消す。
新しい人生(ニューゲーム)。
今度は間違えないといいけど。
【岐路】
「オレ、最悪の人間になる」
この世の全てを滅ぼしてでも、お前を守るから。
神に誓う。
毎日同じ言葉を聞かせてきた。
今までは何の反応もなかったが、やっと声が届いたらしい。
カプセルの中の彼女は、「ありがとう」と静かに唇を動かした。
【最悪】