この狭い空間で、二人寄り添って過ごせたら、どんなにいいか。
【狭い部屋】
失恋した。
気さくで、笑顔がかっこよくて、温かいひだまりのような人だった。
そう思っていた。
けれど蓋を開けてみればその男は生粋の浮気者で、私を含め5股していた。で、そのうち3人と子供を作っていた。
ブランド物をよく買ってくれていたが、もちろん全員同じものをもらっていたし、なんなら偽物もあった。
そんなクズみたいな男が、私の大嫌いな女とくっついた。
女からは「失恋おめでとう♡」と嫌味たっぷりに言われたが、むしろこっちが「クズのお世話頑張って」と言ってやりたくなった。
失恋した。けれど悲しくはない。清々した。
あんな男別れて正解だし、女が破滅に向かうのを高みから眺められるし、
何より、もっといい人を見つけたから。
【失恋】
あのさ、正直なこと言っていい?
大好き。
人としてというか、もう、存在が大好き。
「っていう告白されたんだけどさ、どうすればいいと思う?」
「え、返事してないの?」
「しようと思ったけど逃げられた」
「ああそう…」
「で、どうすればいい?」
「えっとー、まあ…うん、正直になればいいんじゃない?」
その後付き合った二人から代わる代わる惚気を聞かされるのであった…
【正直】
毎年、梅雨空の下で傘を振り回してびしょ濡れになりながらはしゃぐアイツが、何よりも好きだった。
忠告しているのにそのせいで毎年風邪をひいて、一番に自分を頼ってくるアイツが、なんだかんだ言って愛おしかった。
けどこれは叶わない恋。
この雨と一緒に流してくれと、今日も空に願う。
【梅雨】
その無垢な顔で笑いかけるな。
もっと好きになったらどうしてくれる。
ずっともどかしかったことを吐き出してみると、目の前の男は「別にいいけど?」と言って、何の穢れも宿していないその顔に照れ笑いを浮かべた。
【無垢】