満月を見上げる。
あそこに住んでいる兎たちは、今日もかの高貴なお方の為に、薬を搗き続けているのか。
【月夜】
大好きなのに、だいすきと言わせてくれなかったこの壁。
それを壊すように、大好きな君は僕に歩み寄ってくれた。
あの時、先に言われた「大好き」。
今でも、先を取られる「大好き」。
いつか、先に言わせてほしいな。
【大好きな君に】
今日もこの全身が、君の存在を求めている。
【欲望】
あるところに、先輩と後輩がいました。
先輩は空を見て言いました。
「物憂げな空だ」
「…そうですか?」
物事の意味をきちんと知りたい後輩は、すかさず検索をかけます。
「…『物憂げ』とは、大まかに『なんとなく憂鬱な、なんとなく塞ぐような』という意味です。そこから連想される天気は雨や曇りだと思いますが」
「うん、そうだね」
「今は、晴れですが」
「そうだね、雲ひとつない。でも」
空を見つめながら、独特の感性を持っている先輩は笑って言います。
「自分にとっては雲がないほうが憂鬱なんだよ」
「…そうですか。しかし雲は所詮水滴や氷の集まりです」
「その水や氷の集まりがいろんな形をするのが面白いんじゃないか」
「…やっぱり先輩の考え方は分かりません」
そう言いつつ、先輩の考え方にほんの少し心を動かされる後輩なのでした。
【物憂げ】
今日にさよなら、普通の人ならできること。
だけど、私に来るのは明日も『今日』なんだ。
昨日も、明日も、明後日も、『今日』。
『今日』以外の日がなくなった空間。
カレンダーの日付も変わらない。お庭の花も枯れない。鳥もいつまでも眠っている。風は止まったままで、月もいつも同じ形。
毎日『今日』を繰り返したから、明日何があるかも知っている。
明日は、
「イワシがつちからはえてくるんだ」
【今日にさよなら】
今日のお題を見てふと思い出したので書きました。あの曲とても好きです。