あるところに、先輩と後輩がいました。
先輩は空を見て言いました。
「物憂げな空だ」
「…そうですか?」
物事の意味をきちんと知りたい後輩は、すかさず検索をかけます。
「…『物憂げ』とは、大まかに『なんとなく憂鬱な、なんとなく塞ぐような』という意味です。そこから連想される天気は雨や曇りだと思いますが」
「うん、そうだね」
「今は、晴れですが」
「そうだね、雲ひとつない。でも」
空を見つめながら、独特の感性を持っている先輩は笑って言います。
「自分にとっては雲がないほうが憂鬱なんだよ」
「…そうですか。しかし雲は所詮水滴や氷の集まりです」
「その水や氷の集まりがいろんな形をするのが面白いんじゃないか」
「…やっぱり先輩の考え方は分かりません」
そう言いつつ、先輩の考え方にほんの少し心を動かされる後輩なのでした。
【物憂げ】
2/25/2024, 10:57:18 AM