昔、家が嫌で親が嫌いで何もかもどうでも良くて目的地も無く1人で夜道をただひたすら歩き続けたことがある。
ぽつぽつと立っている街灯。
それすらない道は月明かりを頼りに歩いた。
どこまでも続く真っ暗な闇。
どんよりと、でも、どこか安心するような夜風が私の背中を押した。
このまま風に身をまかせてこの歩道橋から飛べないかなと馬鹿なことも考えた。
でも、結局出来なかった。
やれっこなかった。
とぼとぼと歩いて歩いて歩き疲れて、結局みんなが寝静まった家へ帰るのだ。
姉のように綺麗でもなくて要領も悪い。
妹のようになにか目標がある訳でもなく勇気もない。
きっと、あの時の私は周りと比べて葛藤して絶望して嫉妬していたのだ。
今なら馬鹿らしいと言えるが恥じてはいない。
昔の私がいたからこうやって今の私がいるのだから。
今も時々私は昔の私になる時がある。
変わった部分と変わらない部分。
それは誰しもあると思う。
変わりたいともがいてもがいて疲れて。
迷って止まって進んで戻って。
それでもいい。
それでいい。
そうやって生きていく。
それが私だから。
そう言い聞かせなきゃ生きてはいけない気がする。
夜月を眺めながら歩いていると昔のあの日を思い出す。
あの思いを忘れぬよう。
今を生きる。
【⠀風に身をまかせて 】
「時間は決して戻ってこない。でも時間よりも大切なものをあなたは持ってる。」
そう、亡くなったお姉さんが言っていたのを今思い出した。
私は今も昔も迷い道に迷ってばかりだ。
でも、いつもってばかりじゃない。
たまに、迷い道の分岐点にヒントを与えてくれる人に出会うのだ。
中学生の頃だったか。
姉のように慕っていた人がいた。
その人の隣に居れば明るく陽気になるようなそんな人だった。
私はそのお姉さんが大好きで会えばいつも隣にいた。
その時間がとても楽しくて暖かくて安心した。
でも、そんな日々は続くことは無かった。
慕っていたお姉さんは突然いなくなってしまった。
御嶽山の噴火だ。
あの日を今でも忘れない。
丁度、頂上付近に登ったと写真付きでLINEがきた。
青空の元にピースをしながら明るい笑顔のお姉さんが写っていた。
私は「綺麗な景色だね!帰ってきたらまた話を聞かせて!」
そう返信をして返事を待っていたがなかなかこなかった。
写真を撮っているのだろうか。
と、そんなふうに思っていた。
でも、そうではなかった。
ニュースで流れてきたのは御嶽山噴火の映像だった。
頭が真っ白になった。
嘘だ。嘘だ。
そんなはずじゃないお姉さんは無事なはずだ。
きっと、きっとどこかへ逃げていてそのうち帰ってくるはずだと。
でも、戻って来ることは無かった。
いや、戻ってきた。
遺体で。
そう連絡が来たとき私はこれが現実か分からなくなった。
葬儀があると言われ学校を休んで行った。
みんな、泣いていた。
私はその中で泣けなかった。
だって、LINEの中の写真じゃあんな笑っていたのに。
そんなはずないと心のどこか言い聞かせていたのかもしれない。
最後のお別れを言ってとお姉さんの親に言われて久しぶりにお姉さんと対面した。
両手に花を持ちながら棺桶へ近づいた。
色とりどりの綺麗な花の中で私の大好きなお姉さんは眠っていた。
その時ようやく現実に引き戻され感覚がした。
あぁ、もうあの大きな笑い声もキラキラ輝く笑顔も永遠に見ることは出来ないんだと。
そう思うと私は、あまり顔は見れなかった。
思い出の中のお姉さんの姿が好きだったから。
やっぱりみんなは泣いていた。
やっぱり私は泣けなかった。
最後の挨拶をして車に乗せられて運ばれるお姉さんの棺桶を見ながら私はこれまでの思い出をフラッシュバックするかのように思い出していた。
パーッとクラクションを鳴らしながら車は走り去っていった。
それから、半年ほどか1年ほどだろうか。
ふと、寄った雑貨屋さんで最後お姉さんと最後に会った時流していた曲が流れていた。
ポロリと。
目から涙が溢れてきた。
ようやく、私は受け入れたのだ。
お姉さんが居なくなったことに。
これが現実だと。
それからどうやってその店から出たのかあまり覚えていない。
今生きている中で時間は限られている。
お姉さんが生きれなかった時間を私は生きている。
もう、お姉さんの歳を越してしまったよ。
でもね、今もこうして私は迷ってばかりだ。
情けないよね。
失われた時間は戻ってこない。
でも、お姉さんが言った通り時間より大切なものを私はちょっとずつ見つけてるよ。
お姉さんは今笑っていますか。
あの青空の下で笑っていたように。
いつか、いつか、私もお迎えがきたら話したいことがいっぱいあるんだ。
その日が来るまで見守っていてください。
弱虫な私を。
泣き虫な私を。
また、あの日のように笑えるように。
貴方に会いたいよ。
【⠀失われた時間 】
子供のままでいられたらいいのに。
大人になってそう思うようなことが増えて気がする。
責任も社会も義務も全部全部もう、何もかも考えたくない。
大人は自由に見えて自由では無いと私は感じる。
自分で自分を鎖で縛っているかのように私には重たすぎる。
いつまで耐えていけるのだろう。
いつまで笑っていけるだろう。
心の余裕。
金銭的余裕。
未来への不安。
人間関係。
価値観。
成長。
勉強。
言うのは、思うのは簡単だ。
でも、現実は厳しい。
今の自分に腹正しい。
同時に無価値だと思えてしまう。
私みたいな人間はこの世にいてもいいのかと思ってしまうほど追い詰めてしまう。
このまま1人で生きていけるだろうか。
いや、私はひとりがお似合いだ。
裏切られて傷つけられるのはもう疲れた。
でも、こんな私でも何かを伝えたい。
ここにいてもいいよって本当は誰かに言って欲しい。
私も誰かにここにいてもいいんだよって伝えたい。
疲れたよね。
私も疲れた。
息をして心臓が動いて感情を無くしながら生きていく。
少しづつ自分をすり減らして。
いつか、お迎えがきたら恐怖もきっともちろんあるだろうけど私はホッと安心するだろう。
その日が来るまで私は生き続けて何かをちょびっとづつ残していく。
自分が生きた証を。
誰にも気づかれないかもしれない。
けど、それでいい。
ふとした瞬間に顔も分からない名前も知らない誰か1人でも見つけて貰えたらそれでいい。
一人一人の人生という物語は違う。
価値なんて元々ないのだから私は自分にもう価値なんて付けない。
ただ、今日も息をして心臓が動いて感情をなくしながら生きていくだけ。
ただ、それだけ。
【⠀子供のままで 】
毎朝自転車で風をきりながら坂を下る。
浮遊感と少しの高揚感。
そして眠気と闘いながら坂を下る。
下って下ってこのまま底まで落ちてしまいそうだ。
このまま風に乗ってどこかに行けたらいいのに。
と、毎朝思うがそんなことできっこないのは分かっている。
現実的に考えて到底無理だし仕事を放りだす訳にはいかない。
あーあ。
もう、全部投げ出して静かな場所に行きたい。
働きたくないわけじゃない。
人手も足りない給料も少ない人柄だけはいいこの職場に飽き飽きしてきたのか。
それとも家族の問題で疲れてきてるのか。
わかんないや。
本当は全部どうでもいいんだろうな。
こんな状態で未来を見ろなんて出来ると思う?
結婚したい?彼氏は?
色々言われて焦ってた時期はあったけど私は今一人の時間が欲しいし自分がちゃんとしてないのに付き合えないなんて心のどっかで思ってる。
自分の家族を見てるから。
他人みたいに感じる時もある。
私はきっと1人が似合う。
夜空の星のように無数にいるひとつの名前の無い星のようにふよふよと私は浮かんでればそれでいい。
孤独はたまに感じるけどこうやって文章にしたりギターを持って感情を歌に乗せながら歌えば少しは気分が晴れる。
取り繕って取り繕って小さな穴にツギハギを貼りながら進めばいい。
だってそれが人間でしょ?
生まれてきた意味なんて誰にも分からないけど。
生まれて生きていくための意味は今からいくらでも見つかる。
絶望して悲しんで苦しんで。
笑って楽しんで喜べばいい。
私はきっと長生きしないんだろうな。
なんて思って生きてるけどそんな人こそ何故か人より長く生きてしまうって言うよね。
最悪だなって思いながら笑って生きていくよ。
いつか、いつかは親もこの世からいなくなる時がくる。
その時がきたら清々するのかな。
いや、きっと泣くんだろうな。
悔いがないように接したい気持ちがあるけどそんな気持ちまたどっかに置いていくんだろう。
馬鹿な私。
未熟で愚かな自分は人生の迷路にハマって絶賛迷子中。
誰か助けてよって叫んでもみんな迷ってるんだから仕方ない。
自分の事は自分で解決していくしかない。
分かってるんだけど、分かってはいるんだけど。
やっぱ弱いんだよね。
強くなろうとしてもたまに涙が出てくる。
なんでかは分かってるはずなんだけど頭の中でぐちゃぐちゃになって感情が溢れる。
でもそんな時にこそ。
あぁ、私は今生きてるんだなって感じる。
感情があるからまだ頑張れるはずだし生きてるって意味なんだと。
生きてる中で。
新しい出会いもあって当然別れもあって。
与えて受け取って支え合って。
すれ違ってぶつけ合って。
分かり合う。
難しいし険しい道だけどそれが懐かしいって思う日が来る。
生きていればね。
一人一人の人生は全く違う。
昔は幸せな人を妬んだりしてたけど今は違う。
ただ、昔の自分は羨ましかっただけだったと気づいたから。
愛が欲しくてでもそんな自分が無価値に思えて。
もがいてただけだった。
そのすべが分からなかっただけだった。
でも、変わりたいって思えたからこそ今がある。
そんな自分を褒めるべきだし認めるべきだ。
偉いぞ自分!
人生は長くて短い。
きっと、まだまだ沢山苦労するだろう。
でも、私は生きていくよ。
名も無き星のようにふよふよと浮かびながら。
人生で自分の何かを少しづつ未来へ残せたなら。
きっと、満足に笑って名も無き誰かへ託せると思うから。
【⠀風に乗って 】
人が崩れる刹那はあっという間だ。
ひとつの失敗でその一言で。
行動で。
人はあっという間に大きな波に流されてしまう。
人はその大きな波から抜け出すことは容易いことでは無い。
悲しみ苦しみ憎しみ流されながらそれでも抜け出そうともがく。
自分の中の正解を。
自分の中の自分を。
暗闇に取り残されて孤独を感じる苦痛。
そんな時こそ少しでも心の安らぎを見つけて戦う準備を。
決して1人では戦えない。
見つけ出せない。
1人だけでは無理だ。
色んな経験をし。
色んな意見を聞き。
色んなものを見て。
この世界を感じて。
自分を見つめ直して。
自分の中に少しづつ必要なものを貯めていく。
貯金みたいに。
必要なものはしまい、手放すものは手放すの。
全部は持っていけないから。
人生はそう回っていく。
いくらでも人は変われる。
過去の自分から。
未来の自分へ。
バトンを渡すの。
どんなに暗闇にいたっていつかはきっと日の出にいるから。
だって、今もがいてる自分がいるから。
その波を流されるだけではなく乗りこなせたら君は自分の心の年齢に追いつく。
数だけが歳をとってもあなたの心が今まだ子供のように。
大丈夫。
恐れてもいい。
怖がってもいい。
1歩踏み出してみて。
そこには日の出が待ってるから。
【 刹那⠀】