「時間は決して戻ってこない。でも時間よりも大切なものをあなたは持ってる。」
そう、亡くなったお姉さんが言っていたのを今思い出した。
私は今も昔も迷い道に迷ってばかりだ。
でも、いつもってばかりじゃない。
たまに、迷い道の分岐点にヒントを与えてくれる人に出会うのだ。
中学生の頃だったか。
姉のように慕っていた人がいた。
その人の隣に居れば明るく陽気になるようなそんな人だった。
私はそのお姉さんが大好きで会えばいつも隣にいた。
その時間がとても楽しくて暖かくて安心した。
でも、そんな日々は続くことは無かった。
慕っていたお姉さんは突然いなくなってしまった。
御嶽山の噴火だ。
あの日を今でも忘れない。
丁度、頂上付近に登ったと写真付きでLINEがきた。
青空の元にピースをしながら明るい笑顔のお姉さんが写っていた。
私は「綺麗な景色だね!帰ってきたらまた話を聞かせて!」
そう返信をして返事を待っていたがなかなかこなかった。
写真を撮っているのだろうか。
と、そんなふうに思っていた。
でも、そうではなかった。
ニュースで流れてきたのは御嶽山噴火の映像だった。
頭が真っ白になった。
嘘だ。嘘だ。
そんなはずじゃないお姉さんは無事なはずだ。
きっと、きっとどこかへ逃げていてそのうち帰ってくるはずだと。
でも、戻って来ることは無かった。
いや、戻ってきた。
遺体で。
そう連絡が来たとき私はこれが現実か分からなくなった。
葬儀があると言われ学校を休んで行った。
みんな、泣いていた。
私はその中で泣けなかった。
だって、LINEの中の写真じゃあんな笑っていたのに。
そんなはずないと心のどこか言い聞かせていたのかもしれない。
最後のお別れを言ってとお姉さんの親に言われて久しぶりにお姉さんと対面した。
両手に花を持ちながら棺桶へ近づいた。
色とりどりの綺麗な花の中で私の大好きなお姉さんは眠っていた。
その時ようやく現実に引き戻され感覚がした。
あぁ、もうあの大きな笑い声もキラキラ輝く笑顔も永遠に見ることは出来ないんだと。
そう思うと私は、あまり顔は見れなかった。
思い出の中のお姉さんの姿が好きだったから。
やっぱりみんなは泣いていた。
やっぱり私は泣けなかった。
最後の挨拶をして車に乗せられて運ばれるお姉さんの棺桶を見ながら私はこれまでの思い出をフラッシュバックするかのように思い出していた。
パーッとクラクションを鳴らしながら車は走り去っていった。
それから、半年ほどか1年ほどだろうか。
ふと、寄った雑貨屋さんで最後お姉さんと最後に会った時流していた曲が流れていた。
ポロリと。
目から涙が溢れてきた。
ようやく、私は受け入れたのだ。
お姉さんが居なくなったことに。
これが現実だと。
それからどうやってその店から出たのかあまり覚えていない。
今生きている中で時間は限られている。
お姉さんが生きれなかった時間を私は生きている。
もう、お姉さんの歳を越してしまったよ。
でもね、今もこうして私は迷ってばかりだ。
情けないよね。
失われた時間は戻ってこない。
でも、お姉さんが言った通り時間より大切なものを私はちょっとずつ見つけてるよ。
お姉さんは今笑っていますか。
あの青空の下で笑っていたように。
いつか、いつか、私もお迎えがきたら話したいことがいっぱいあるんだ。
その日が来るまで見守っていてください。
弱虫な私を。
泣き虫な私を。
また、あの日のように笑えるように。
貴方に会いたいよ。
【⠀失われた時間 】
5/13/2024, 11:40:27 AM