白い息を吐きながら
月夜を眺め
夜の匂いに包まれながら
夜風が吹き抜けていく
時折虫の囀りが聞こえ
足音でリズムをとりながら
月夜の光を頼りに歩く
【月夜】
君は今元気でいるかな。
笑っているかな。
幸せなのかな。
大好きだった君は高校の卒業と同時に行方をくらませた。
今も人とすれ違う度に君の姿を探してしまう。
君は今どこで何をしているの?
私はね、大好きな君に伝えたいことが沢山あるんだ。
あの時言えなかった言葉が今も喉の奥につっかえて苦しいよ。
もう、5年も経っちゃったね。
もうこの世にいないのかもしれない不安と君がどこかで幸せに暮らしているはずだという希望。
ぐちゃぐちゃに入り交じったこの5年。
辛かったよ。ほんと。
君が無事でいることだけを私は考え続けるよ。
私が知らないところでいいから君はどこかで幸せに笑っていてよ。
また、どこかで、偶然でもいいから、また会えたら
その時は空白の5年間を語り合いたいな。
だって、君は私の大切な友達だから。
大好きな君にまた会いたいよ。
【大好きな君に】
私は五人兄妹の3番目ちょうど真ん中に生まれた。
兄がいて姉がいて下には妹が二人いる。
我が家には4人も女がいるのにひなまつりの雛人形は無かった。
でも、料理があまり得意じゃない母のちらし寿司がとても好きだったのを覚えてる。
大人になってからは久しくやってないなとふと思い、いつの間にか母の代わりに料理担当になってしまった私がひなまつりっぽい事をやろうと母が昔作っていたちらし寿司を私なりに作ってみた。
でも、夜ご飯の時間になっても父しか帰って来なかった。
まぁ、いつもの事かと割り切り父と2人っきりのひなまつりをした。
今日はほろ苦いひなまつりになったなぁ、とほかの兄妹の分を冷蔵庫へ入れた。
昔はみんなでご飯を食べてたっけな。
あの時はまだ家族は仲良しだったけ。なんて。
昔と今じゃ全部変化して家族というものが無くなった。
一緒に住んでいるのにまるで他人みたい。
分かりきってたことなのになんでこんなにぽっかり穴が空いてるんだろうな。
なんでこんなに虚しいのだろう。
思い出の中のひなまつりは過去の私に嫉妬してしまいそうなほどみんな笑っていてきらきら光っていて眩しかった。
【ひなまつり】
人間は欲望の塊だ
欲しいものが手に入ったとしても
次へ次へと喉の乾きが癒えないように新しいものを欲しがるのだ
醜い欲の塊に過ぎない
新しいものの為に古いものを捨てる
勿体ないとは思わないかい?
【欲望】
毎朝乗る列車は顔見知りがいっぱいいる。
いつも教科書を広げながら寝ている男子高校生。
女子大学生の2人組。
いつも疲れた顔をしているサラリーマンのおじさん。
みんな知ってるけど知らない人。
他の人から見たら私も顔見知りに入っているだろうか。
そんな風に考えたらくすりと笑えた。
毎朝同じ時間に同じ車両。
顔見知りの人達。
ガタゴトと揺れるこの箱の中で本を読んだり風景を眺めたりする時間が何気に好きだ。
そんな日々にも最近変化がある。
教科書少年は私服になって大学生になってたり
女子大学生2人組は就活スーツを着ていたり
サラリーマンのおじさんは最近イキイキした顔になってたり
少し寂しい気もするけどこの変化を見るのも楽しい。
新しい顔見知りも増えた。
不安そうな顔をしたピカピカの制服を着ている高校生だ。
この箱の中ではとびきりの新入りだから新鮮な気分になる。
微笑ましい限りだ。
とりあえず3年間よろしくねと心の中で言っておいた。
いなくなる人もいれば新しく入ってくる人もいるこの小さな箱の中。
たまには違う列車に乗ってどこかに行こう。
そしたら色んな物語が見れるから。
【列車に乗って】