時間が止まれば良いのになんて思ったところで叶わないと分かってはいる。
それなのに時間が止まればという考えに縋る自分。
馬鹿だなぁと嘲笑する。
もし仮に時間が止まったとして一体何になるのか。
考えたところで、ぱちんと風船が割れるような感覚になる。
あぁ、そうか。
どうして時間よ止まれなんてことを思ったか。
死ぬのが恐ろしくて堪らないのだ。
死にたくない。
時間が戻れば。
時間さえ止まれば。
君からのLINEが一通届いていた。
「なんだろう」そう思いながら開いてみた。
『明日一緒に遠くへ出掛けよう』
私は暫く固まった。
あの人は自分から誘うようなことを全くしてこなかったのに。
「珍しいね、誘ってくるなんて。
何かあったの。」そう送ってみた。
『何もないよ。ただ一緒にいたいと思ったんだ。』
LINEはすぐに返ってきた。
一緒にいたいなんて普段なら恥ずかしがって言わないのに。
「折角誘ってくれたけどごめんね。
明日は用事があるんだ。」
『ううん、大丈夫。急にごめんね。』
その日以来、LINEが来ることはなかった。
あの子の行方が分からなくなったそうだ。
私は唖然とした。
あの日、あの子は私を頼ったんだろう。
私は気がつかなかった。
どうすることもできなかった。
あの日は、9月の始まりのことだった。
夜明け前の輝きが目を焼く。
痛いくらいに眩しく此の地を照らす。
そんな輝きがあるなか、私はどうだろうか。
どれだけ照らされようと輝かない。
輝けない。
またひとり、友人と呼べる人が居なくなってしまった。
私は人付き合いが苦手だ。
いつも友人の後ろを着いていく。
自分だけでは行動が出来ない。
分かっている友人には私以外の友達がいることを。
でも私にはあなたしか居ない。
いかないで欲しい、置いていかないで。
私だけを見て。
そんなことを思いながら道を歩く。
心の中が蠢く。
嗚呼、こんなのだから置いていかれる。
こんなことあなたには言えない。
どうかこんな醜い私に気付かないで。
今日も鏡を見る。
うん、可愛い。
そう思いながらメイクをする。
他の人は、自意識過剰なんか言ったりする。
自意識過剰で何が悪い。
私のために可愛くなって何が悪い。
そうじゃなきゃ、ボロボロになる。
だから私は今日も可愛くなる。
君の奏でる音楽で私は救われた。
救われたなんて馬鹿馬鹿しく思うかもしれない。
でも私はそう思った。
私も君と同じ何かを作り出す人間になりたい。
今度は私が誰かを救う立場になりたい。