無垢
サンタクロースをいつまで信じていただろうか。
僕は小学校4年生のときまで信じていた。同級生にからかわれるまでは。
今の僕には、サンタクロースを信じている子供たちがいる。
そんな彼らを見ていると僕まで純粋な気持ちを取り戻したような温かい気持ちになる。
終わりなき旅
18歳の時、借金の連帯保証人になっていた父が、3億7千万円の負債を背負い資産を全て失った。
家族を心配させないために黙っていた父は、僕が20歳の時に自殺未遂をした。それから僕は家族を支えるために働いた。
2人の妹と弟を無事大学卒業させることができたのは僕の誇りだ。
その後、弟は精神的な病を患い家で療養生活を送っている。
様々な困難があったが、家族皆、今は毎日笑いながら生活している。
贅沢な暮らしはできないが、穏やかな日々を過ごすことができている。
「ごめんね」
20歳を過ぎた頃、僕は自分の過去の行動を振り返り、後悔することが増えた。
自分の不誠実な振る舞いで傷つけてしまった人たちのことを考える。
連絡が取れ謝罪する機会に恵まれたこともあったが、どうしても連絡先が分からない人もいた。
心の中で何度も謝罪を繰り返す。
たとえ他の人たちが見ていなかったとしても自分の行動は自分が見ている。
悪いことはできないのだ。
いずれ苦しむのは自分自身だからだ。
忘れられない、いつまでも。
妹の結婚式でうんこを漏らした。
30歳の冬だった。
忘れられない、いつまでも。
怖がり
妻と交際を始めたての頃、遊園地デートで、有名なお化け屋敷に行ったことがある。
彼女が行きたいと言ったお化け屋敷。怖がりな僕は何とか行くの回避しようとしたが、妻の期待のこもった眼差しを前にすると拒否することは難しかった。
襲いくる恐怖の仕掛けの数々に、僕は逃げ出したい気持ちを抑えていた。
妻のいる手前、醜態を晒したくなかった。
なんとか痴態を見せずに脱出できたと思ったが、彼女には全てバレていた。
妻と握っていた手に力を込めていたり、警戒をしてあちらこちらを見て挙動不審になってしまった反応で分かったようだ。
彼女には今もそのお化け屋敷のことを可愛かったとからかわれる。
豪胆な妻に尻に敷かれる関係はこの時に始まったとも言える。