泣かないで…
お風呂の湯船に
顔だけ出して耳まで浸かる。
水道の蛇口を下から眺める。
泣かないで…
相手は泣いていたのだろうか…?
それとも自分…?
ぷかぷかと身体ごと水面に浮かぶ。
息を吐くと急に沈み
つるんと湯船の底
ああ、水面に人間が揺れる
水槽の魚はいつも自分を見てるんだ
泣いてもいいんじゃないですか?
終わらせないで…
私が高校生の頃の話だ。
「乗って残そう飯田線」
飯田線という鉄道を廃線にしないための
地域のスローガンみたいなものがあった。
当時私は電車通学をしていた。
道中の大宮通りには、春には桜が満開だった。
卒業して5年間、通勤にも電車を使った。
同年代の仲間は自家用車に乗った。
長野県は車が無いととにかく不便だ。
でも、電車を使いたかったのだ。
あれから、ん十年…
久しぶりに乗った電車は
バスのワンマンカーみたいなシステムになっていて
戸惑いながら後ろから乗った。
時代は流れて、
いつか想像もできない乗り物が
空を行くのかもしれない。
私はそのとき
空のずっとずっと上で
電車の素晴らしさを叫ぶことにしよう。
意味がないこと…
いろんな罠にはまってきた。
詐欺に遭ったこともある。
私は、そのすべてに意味があったと思いたい。
昨今、闇バイトのニュースを聞かない日はない。
はっきり言おう、
うまい話はありません!!
ホワイト案件、荷物運び、高額〇万、日払い
全部詐欺と思っていい。
自宅内職の時給換算は高くて200円だ。
自宅で簡単、ネット、高額報酬…相手は巧みに誘う。
気がついたときには何万も損をしている。
闇バイトで騙されて強盗殺人
やれと脅されても、やるのは自分だ。
やらないのも自分だ。
騙されないのが一番だけど、
騙されたら、どうしたらいいか、どうするか
それはもっと大切なんだ。
眠りにつく前に…
さよなら
助手席のドアを閉めると
車はゆっくり動き出し
ひとりぼっちの私が立っていた。
あの人と別れた日の
あのシーンが私の中で永遠となった。
もしも来世があるとして
私はあの人と結ばれたいのだろうか?
私が永遠の眠りにつくとき
最後に願うのはなんだろう。
暗がりの中で…
長野県に元善光寺というお寺がある。
息子は、小学校の社会見学でそこのお戒壇めぐりをした。
お戒壇は真っ暗だ。
クラス全員がぞろぞろと一列に並んで入った。
息子は出席番号が一番最後だったから、
どんなときにも最後尾だった。
途中で女の子が一人動けなくなってしまった。
暗闇が怖くて足がすくんでしまったのだ。
息子はその子の手を引いて出てきたそうだ。
お戒壇の途中には、「幸福のかぎ」というのがあり、
息子はその女の子と一緒に幸福のかぎを触ったらしい。
さて、その話には、今のところ続きはない。
若い者のロマンスを年寄りは期待するが
まぁ、黙っておくか……