眠りにつく前に…
さよなら
助手席のドアを閉めると
車はゆっくり動き出し
ひとりぼっちの私が立っていた。
あの人と別れた日の
あのシーンが私の中で永遠となった。
もしも来世があるとして
私はあの人と結ばれたいのだろうか?
私が永遠の眠りにつくとき
最後に願うのはなんだろう。
暗がりの中で…
長野県に元善光寺というお寺がある。
息子は、小学校の社会見学でそこのお戒壇めぐりをした。
お戒壇は真っ暗だ。
クラス全員がぞろぞろと一列に並んで入った。
息子は出席番号が一番最後だったから、
どんなときにも最後尾だった。
途中で女の子が一人動けなくなってしまった。
暗闇が怖くて足がすくんでしまったのだ。
息子はその子の手を引いて出てきたそうだ。
お戒壇の途中には、「幸福のかぎ」というのがあり、
息子はその女の子と一緒に幸福のかぎを触ったらしい。
さて、その話には、今のところ続きはない。
若い者のロマンスを年寄りは期待するが
まぁ、黙っておくか……
衣替え…
ラブラドール雑種の ナナさんは
冬毛がミチミチに生える。
知らないうちにミチミチになるから
いつ生え替わるのかわからない。
ナナさんは 賢いが
バカヤローでもある。
ある春、ナナさんとお散歩をしたときのことだ。
ナナさんのリード紐が私の手から外れた。
一瞬、何が起きたか分からなかった。
それは、ナナさんにとっても同じだった。
ナナさんは、次の瞬間
自分のリード紐をくわえると
一目散に逃げ出した。
紐を引きずって逃げると捕まえやすいが
賢いナナさんは、それを見越してくわえたのだ。
早朝、ナナさんが逃げる、私が追う。
ナナさんは、道の曲がり角では私を待ち
カーブミラーで目が合うと、すかさず逃げた。
くそ~!
力の限り追いかけるが
走力は断然ナナさんが上だった。
あぜ道を跳ねるように走るナナさん。
追いかけて足を滑らせ側溝に落ちた私。
もう無理だ。役場に電話しよう…
(飼い犬の逃走などは役場に通報しなくてはならない)
ふと顔を上げると
紐をくわえたナナさんが駆け寄ってきて
申し訳なさそうに見下ろしていた。
ナナさんとのエピソードは尽きないが
書ききれないので続きはまたの機会にね。
始まりはいつも…
空間のゆらぎ
宇宙の始まりはビッグバンだという…
宇宙の終わりは
胸がぎゅーんとして聞きたくない。
こんな夜、私は腹筋運動をしています。
あなたは何をしますか?
すれ違い…
まだ未成年だった私は
ある時期、ボウリングにハマっていた。
けれど、なぜボウリングに通っているかわからないくらい
スコアは低かった。
目的はボウリング場の隅にあるジュークボックスだった。
機械にリクエストすると100円で1曲流すことができた。
当時、「異邦人」という曲が大好きだった私は
行くと必ずリクエストを入れていた。
広いフロアに好きな曲を響かせるのは至福だった。
さて、あれから40年…
この頃、80年代のヒット曲特集とかをTVで観た。
寝転んで観ていた夫が言った。
「そういえば異邦人、ボウリング場でよく流れてたなあ」
……あれ?