忘れたくても忘れられない…
心が激しく動いたとき
人はその時の記憶を忘れないという。
生まれて最初の記憶はなんだろう?
私の場合は
食事の風景…
肉を食べている。
父親が口で噛んで柔らかくして私に与えている。
状況から察すると、1歳前後と思われる。
あなたはひとが先に噛んだ肉を食べたことがあるだろうか?
味が薄くてとてもまずいのだ。
非常に強い憤りを1歳の幼児は感じていた。
恩知らずな子でごめんなさい。
今は感謝しています。
でもあの肉は不味かったよ。
鋭い眼差し…
目力のある人っているよね。
例えば…
どうぶつ園でコアラと目が合っても
ドギマギしないよね。
あ、する人もいるかもしれないか。
大きいとか細いとか
あんまり関係ない気もする。
我はもう撃たれてしまいし鳥なれば君の視界の外に安らぐ
❨俵万智さんの短歌❩
高く高く…
スマホの待ち受け画面に
スカイツリーから見た夜景を使っている。
中央に東京タワーがある。
小学校の修学旅行で東京タワーに行った。
当時、東京タワーの中に手相の占い機があり
百円玉で人生を占った。
細かく印字された文字を丹念に読んだ。
自分の手相を機械が判定したのである。
絶対に当たる確信があった。
隅から隅まで何度も読んだ。
「大器晩成」
12歳の少女は
小さな胸にその言葉を刻み込んだ。
さて、私は現在57歳……
……あれ?
大器晩成!?
神様! 今ですよ!!
子どものように…
私の息子は、
小さい頃からおじいさんのような子供だった。
人にはそれぞれ 「体年齢」と「タマシイ年齢」がある。
私は輪廻転生を信じている。
間違いなく私より息子のタマシイ年齢は高い。
しかし
なぜだかわからないが
思春期を過ぎて息子の中身は
おじいさんから青年に若返ってしまった。
はて?
私の中で法則が狂う。
前世を忘れたからか?
うーん…
わからないや…。
容れ物になんの意味があるだろう。
やがて容れ物は朽ちタマシイは次の容れ物に入る。
タマシイを磨いていこう。
放課後…
放課後に何かした記憶がない…
あ、そうそう
しいたけを食べられない友達がいた。
親しくはなかったがクラスメイトだった。
給食の時間が終わり
掃除の時間が終わり
下校近くになってもまだ一人で椎茸と格闘していた。
彼女の机に近づいて私は言った。
鼻を強くつまむんだ。
息をせずに飲んじゃいなよ。
涙目の彼女は言われるままに鼻をつまんで椎茸を飲んだ。
それから数年後
私達は中学生になり、クラスは別れた。
ある日、隣のクラスで給食中に
鼻をつまむ彼女を見かけた。
あれから四十年。
今は普通に食べられるだろうか…