「心だけ、逃避行」
貴方と一緒に逃げてしまいたいけど、それは許される事ではないから。
だから、せめて心だけでも貴方と居させて。
心だけでも、貴方と一緒に逃避行させて。
きっと、貴方と私は一緒にはなれないから。
だから、せめて……
「冒険」
毎日何らかの発見がある。
昨日までは知らなかった花の名前がわかった。
長年間違えて覚えていた物の正しい名前を知った。
道を間違えて新しいお店を見つけた。
オススメで流れてきた動画を見たらハマった。
着た事のない色の服を着てみた。
ホントにちょっとした事なの。
でも、ちょっとした発見が毎日の冒険。
それが、楽しい。
「届いて……」
この声が、貴方に届けばいいのに。
どれだけ叫べば、届くの?
どれだけの想いを込めれば、届くの?
何も解らない私は、ただただ叫び続ける。
この、誰も居ない深い森の、穴の中で。
命が尽きるその日まで、叫び続ける。
「あの日の景色」
旅行に行って初めて見る景色。
一本道を間違えて、そのおかげで見つけたキレイな景色。
テレビや本で見た絶景。
年を重ねるにつれて、沢山のキレイな景色や、キレイじゃなくても心に残る景色を見てきた。
でも、どれだけ素晴らしい景色を見ても。
幼い頃に、父の肩車で見た、日頃は見られない様な高くからの景色には敵わない。
遊び疲れて眠りこけ、母に背負われて、目が冷めた時に肩越しに見た景色には敵わない。
ただ真っ直ぐに愛された記憶と共に蘇る、あの日の景色に勝る景色はない。
「願い事」
子供の頃の願いは、大きくなったら好きな仕事がしたい、とか、可愛いお嫁さんになりたい、とか、もっと俗物的にお金持ちになりたいとか、現実味のない事が多かった。
それが思春期になると。
早く大人になりたい、とか、早く家を出たい、とか、彼氏とこのまま仲良く続けたい、とか、少し現実味を帯びてきたけど、でも今思うと、まだまだおままごとの様な願いだった。
そして青年期になると。
仕事の資格を取りたいとか、キャリアや収入アップの為に転職したい、とか、自分の努力次第で手に入れられる事を願う様になった。
そして今は。
色んな経験をして、結婚して子供も生まれ。
努力で手に入れられる物はある程度は手に入れてきた。
そんな私のたった一つの願い事は。
兎に角この子が幸せで居てくれればそれでいいと思う。
自分が年老いて、いつかこの子の足枷になってしまうかもしれない。
それが嫌だから、そうならない様に努力はしてる。
でも、人生はどれだけ準備をしていても、いつ何処で何がどうなるかは解らない。
そんな時でも。
兎に角この子が幸せでさえあれば、それでいい。
この子自身が、幸せだと思える人生を歩んでくればそれでいい。
それが、いい。それしか、ない。
それが今の私の、たった一つの願い事。